●ジレンマを避けるためのビジョンの重要性
柳川 話が各論に入るのですが、基礎科学を発展させたいという目的と、具体的なビジネスとは、必ずしも両者が一致しない場面が出てくるような気がしています。流れ星を上手に流すことに集中すると、本当は基礎研究で別のことを地道にやりたいと思っていても、人も資源も資金も使えない……そのような局面が出てくるのではないかと思うのです。そのあたりのジレンマはないのでしょうか?
岡島 今はとにかく流れ星を流そうと言ってやっているので、ジレンマはありません。ただ、するどいご指摘でして、おっしゃられるように、ジレンマが生まれてくるかもしれないとは思っています。
そこは考えどころで、将来的にどうなるかは分かりませんが、そういったジレンマがなるべく生まれないように、ビジョンを大きく打ち立てて、ビジョンに同意してくれる人たちにご一緒していただきたいなと思っています。
●どのように資金調達を行い、会社を大きくしていったのか
柳川 ちょうどお話が出たので時系列的には少し戻る形になりますが、資金調達について伺いたいと思います。
会社をつくって、サポートしてくれる人を集めて事業化するとなると、資金調達が必要になりますよね。どういったことを説明して、どのような人からお金を集めて会社をだんだんと大きくしていったのでしょうか。
岡島 資金調達のフェーズはいくつかありました。最初のうちはアイデアが突飛で面白いという理由から、エンジェル投資家の方々に出資してもらい、サポートしていただきました。
そして、出資していただく以上、面白いというだけでなく、私たちの取り組みをどうやって社会に還元していくか、リターンを意識しないといけないというフェーズが、ここ2、3年でした。そのため、しっかりとしたマネタイズプランなどを弊社メンバーと一緒に考えていきました。
結果、2019年の8月末にクローズしたシリーズAは、ベンチャーキャピタルさんからのご出資メインのラウンドとすることができました。これは、それまでは心意気を買ってくださったり、面白がってくださるエンジェルの方が中心でしたが、ビジネスとして成立すると確信をもっていただける方も応援していただけるようになったことを意味しています。
●ビジネスの鍵を握る3つの事業
柳川 なるほど。ここまでのお話から、夢があって、かつ基礎研究、将来の宇宙ビジネスも役に立つ、とても大きないいお話だと思いますが、どうやってお金を儲けるのかと、この対談映像を見ていらっしゃる方も感じているのではないかと思うのです。
また、資金調達をしたあと、どうやって投資家の方にお金を返していくのか。投資家の方もそこを意識されると思いますが、現段階の話と、最初の頃にエンジェル投資家の方に対してどのようなことをお話しされていたのでしょうか?
岡島 現段階では、私たちの事業の3本柱についてお話ししています。1つ目がメインの柱である流れ星を使ったエンターテインメント事業で、流れ星を見たい人が購入する、そういうようなモデルを描いています。
2つ目はデータビジネスです。スタートして10年くらいはエンターテインメントビジネスがメインになりますが、それが例えば20年、30年というスパンで見たときには、取得したデータを活用するデータビジネスがメインになっている可能性が高いと思っています。
また、人工衛星や流れ星をつくったり、エンターテインメントをつくっていくのに必要な技術が、実は他の宇宙産業のプレイヤーの方々にとっても必要な技術であるというケースがいくつかあります。データビジネスとエンターテインメントビジネスに比べると、少し小さめのパイではあるのですが、そういった技術を売っていこうとしています。それが3つ目です。
柳川 なるほど。いずれにしても、今日明日にお金がすぐに得られるビジネスではなく、少し長いスパンで、時間をかけていく感じですよね。
岡島 そうですね。ただ、流れ星を流して、エンターテインメントとして楽しむという意味では、マネタイズは比較的早いほうだと思っています。たしかにIT企業さんに比べると遅いのですが、1機打ち上げて流れ星を発生させることができれば、マネタイズの種になるため、他の宇宙ビジネスの企業さんに比べると、比較的早いと考えています。
柳川 たしかにそうですね。かなり先を見据えた多くの宇宙ビジネスに比べると、流れ星のところではわりと早期に資金回収ができるということですね。
シリーズAよりももっと前、「会社をつくります。人を集めたいので誰かお金を出してくれませんか」という最初の頃は、流れ星を鑑賞するところでお金を得るという話だったのですか?
岡島 そうですね。私たちの流れ星は直径200キロ圏内でみんなが...