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DATE/ 2022.10.13

カレーが認知機能の老化を防ぐ?

 日本人は週に1回以上、何らかの形でカレーを食べているそうです。これは年間でいうとおよそ79回。カレーは日本の国民食と言っていいでしょう。カレーが身体にいいという話はこれまでにも時折話題になってきました。また最近では、認知症予防に効果があることを示唆する研究結果が発表されています。ということで今回はカレーと認知症の関連について発表された研究を見てみましょう。

カレーをよく食べる人は認知症のリスクが少ない?

 これまでにもカレーを食べるインド人は認知症が少ないことが知られていました。ただし当初は、当時のインド人の平均寿命が短いからではないかという話になったようです。しかし、その後2017年に発表されたシンガポール人を対象とした調査で「よくカレーを食べる人は認知症のリスクが少ない」という結果が出たそうです。

 また2021年には日本人を対象とした疫学研究においても興味深い結果がでています。「長期のカレー摂食頻度が高いほど、認知機能が有意に良好」というものです(第28回日本未病学会学術総会、ハウス食品グループ本社株式会社、および五十嵐中客員准教授(東京大学)、小久保欣哉准教授(二松学舎大学)の共同研究による)。

 調査対象は50歳以上の一般生活者で、「調査直前1年間」(短期)と「成人以降、調査1年前まで」(長期)のカレー摂食頻度と認知機能との関係を明らかにしたものです。調査では月2回以上摂食する「高頻度群」、月2回未満の「低頻度群」に分けそれぞれに性別、年齢、職業の分布が等しくなるようにして、各群1002人ずつを対象としています。

「クルクミン」が鍵を握っている可能性

 ではカレーの何が、良好な認知機能の維持につながっているのでしょうか。一つにはスパイスが挙げられます。『脳の毒を出す食事』の著者、白澤卓二医師によると「カレーに使われるターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンというポリフェノールが、脳由来の神経栄養因子を増やす」とのこと。さらに同氏はオメガ3の油を取ることで、クルクミンが脳の栄養不足を解消する効果を存分に発揮できるとして、サバ缶でカレーを作ることを提案しています。

 また、認知症専門医の遠藤英俊氏も、「クルクミン」の効能に触れています。カレーのターメリックに含まれる「クルクミン」はアルツハイマー型認知症を防ぐのではないかと考えられている点を挙げ、自身も週に2~3回食べているとのこと。他にも認知症予防に関連して、筋肉量の減少を防ぐために「タンパク質をたっぷりとること」や「なるべく多様な食品を食べること」を推奨しています。

適度な運動と周囲とのコミュニケーションも大事

 このように「カレーを食べると認知症のリスクが下がる」ということにはそれなりの信憑性がありそうです。もちろんカレーを食べていれば認知症にならないということではありません。認知症のリスク因子には、喫煙、運動不足、社会的孤立、抑うつといったこともあります。特に定年退職後、ぼんやり家に閉じこもる、周囲とコミュニケーションを取らない、運動をしない、という状態は危ないようです。適度な運動と規則正しい生活、健康的な食事、周囲とのコミュニケーションという点を意識して生活することも意識した方が良いでしょう。

 こういったリスクを避けるために、遠藤医師が実践しているのは、料理、水泳、ゴルフ。料理はいくつかの作業を同時進行するので脳の活性化につながり、水泳とゴルフは有酸素運動なので脳の血行がよくなります。自分の興味のあるものに取り組むことが、続けるためのコツとのこと。この意味では、ある程度若いうちから、長く取り組むことのできるスポーツや趣味を探しておくことは大事かもしれません。

<参考サイト>
日本人の中高齢者で、カレーの長期的かつ頻繁な摂食と 良好な認知機能との関係を確認│ハウス食品株式会社
https://housefoods-group.com/newsrelease/pdf/release_20220107_the_study.pdf
認知症専門医が週4回食べる!脳の疲れがとれる大衆的人気メニューとは?│DIAMOND ONLINE
https://diamond.jp/articles/-/285108
カレーは週3回食べる 専門医がやっている認知症予防│ブックコラム
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO60843490W0A620C2000000/
Q日本人は年間どれくらいカレーを食べる?|S&Bカレー.COM
https://www.sbcurry.com/faq/faq-463/
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