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DATE/ 2018.04.06

なぜ「ねずみ」が実験に使われるのか?

 「マウスによる実験で◯◯の効果が証明された」「◯◯の薬は現在マウス実験での結果が待たれている」など「マウスでの実験」という話をよく聞きます。よく考えてみれば、そもそもなぜ「ねずみ」が実験に使われるのでしょうか。この点について調べてみると、なかなか興味深い話がありました。

ねずみの繁殖力は非常に高い

 ハツカネズミを改良した実験用マウスの場合、1度に6~8匹の子どもを生み、この子どもたちは1ヶ月ほどで成体になり、寿命は1年~2年とされています。たくさんの子どもを生み、成長が早く寿命が短いことが特徴です。このことから、老化の研究や集団でのデータを取るのに適しているというわけです。

 ちなみに、爆発的に数字が増えることを「ねずみ算式に増える」と表現しますが、この言葉、実は江戸初期の和算に由来しているそうです。小学館の日本大百科全書によると、初出は1627年(寛永4)に刊行された『塵劫記(じんごうき)』という和算の書。12匹(つがい6組)の雄雌がそれぞれに12匹の子どもを生み、1ヶ月後生体になった者同士がまた12匹子どもを生み、またその子どもが……と計算すると、1年で276億8257万4402匹になることが記載されています。

 実際は生物学的にはここまで一気に繁殖するというわけでもなく、食料の問題や住む場所、天敵の問題などもあるので、この通りにはいかなさそうです。しかし、日本の計算術がかなり進んでいたことは事実のようです。

飼育コストがかからない

 ねずみは人間と同じ哺乳類のなかでも小さく、狭い空間と少ない食料で多くを飼育することができ、さらには先ほど述べた繁殖力。つまり、さまざまな実験を低コストで行うことができるのです。また、ヒトに対して行うと人道的に問題になるような実験もねずみであれば行うことが可能です。

 ちなみに実験で使われるねずみにはハツカネズミを改良・繁殖させた「マウス」とドブネズミを改良・繁殖させた「ラット」がいます。マウスが40g程度なのに対して、ラットは700gを越えることもあるそうです。ラットはその大きさなどから解剖がしやすく、病理学的研究に使用されることが多いとのこと。

遺伝子改変しやすい

 実験で用いられているマウスは近親交配で作られることが多いそうです。たとえば、遺伝子がバラバラのマウスで実験を行うと、遺伝的要因により何からその変化が生じたのか、検証が不確かになってしまいますが、同じ遺伝子のマウス(近交系マウス)で実験すれば、どの部分に変化や問題が起こったのか、検証ができます。

 この点で、成長が早く繁殖力が強いということの意味もより重要になってきます。マウスは順調にいけば1年で4世代すすめることができ、近親交配を20世代以上続けると、親兄弟姉妹どの個体をとっても遺伝的にもほとんど同じになるとのこと。つまり、一つの系統の近交系マウスを作り出すのに5年程度で済むということになります。

 理化学研究所によると、人類がこのような近交系マウスを育成し始めたのは100年以上前とのこと。それから現代までに、がん、糖尿病、神経疾患などを特徴とする400種類以上の近交系がつくられ、医療技術の発展や生命現象の解明に役に立っているそうです。

<参考サイト>
・(独)理化学研究所筑波研究所バイオリソースセンター:研究用のマウスとは
http://rtcweb.rtc.riken.jp/joyo2/D0922.html
(10MTV編集部)

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