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車を持ってることがステータスなのは過去の話?
かつて車は男性のステータスだった時代がありました。スーパーカーブームという言葉を聞いて懐かしく感じる方もいるでしょう。テレビでも特に警察モノのドラマでは、いつもかっこいい車が登場していました。ここ数年、「若者の車離れ」ということが言われてきました。実際に若者は車離れしているのでしょうか。また、かっこいい車に乗っていることは、もうステータスではないのでしょうか。
2017年は16.8%(都市部10.4%、地方19.0%)、2018年16.7%(都市部8.9%、地方19.7%)、2019年16.7%(都市部8.0%、地方19.2%)という結果に。2017年(調査は2016年11月)以降、新成人のマイカー所有率は増えています。単純に車を所有しなくなっているということはなさそうです。つまり、若者の車離れは、所有数からは立証できません。
では、同調査にある「20歳のうちに購入したいクルマ」を見てみましょう。トップはトヨタアクア、2位は日産ノート、3位はフォルクスワーゲン(Golf/Poloなど)、以下、4位日産キューブ、5位プリウスという結果です。実に堅実な車選びという感じがします。
こう見てみると、車の所有率は上がっていますが、車をステータスとして捉えているかと言うとそうでもないことがわかります。つまり、「若者の車離れ」とは「車をステータスとして捉えることからの離脱」と考えていいでしょう。ただし、6位にはレクサス、8位にBMWといった高級車もランクインしているので、車から完全にステータス性が消えているとはいい切れません。
確かにそうかも、と思わせられる部分もあります。現在の日本で売れている車は日産ノートやトヨタアクア、プリウスといったいわゆる燃費がよく実用性の高い車です。このあたりは先に挙げた「20歳のうちに購入したいクルマ」と重なっている車種も多いですが、実際にこれらは故障も少なく、燃費の良さは過去とは雲泥の差です。
一方、故障が少なく、燃費がよく、また安全性能も高く、となってくると当然新車の価格は上がります。この点に関しては、自動車販売店が「残価設定型クレジット」と呼ばれる、将来の買い取り費用をあらかじめ引いた分を支払う方法で対応しています。この方法であれば、月々数千円という支払いで車を所有することも可能です。もしかしたら、このあたりが昨今また若者が車を買い始めた理由とも関連しているかも知れません。
つまり、現代の若者は単純に車のステータス性によって購入を検討するのではなく、むしろ合理的で快適な移動ツールとして車を利用していると言えます。またここでの「若者の車離れ」とは、「車をステータスとしてみることからの離脱」であり、車そのものを拒否しているわけではないということが分かります。買い方に無理がないよう、毎月の支払いが安く済む方法であれば車を買うという選択を行っています。こう考えると、現代の若者は賢くしたたかな一面があると言えるのではないでしょうか。
新成人のマイカー所有率は増えている
ソニー損保は毎年、「新成人のカーライフ意識調査」を発表しています(インターネットリサーチ、有効回答数1000件)。まず、2015年の資料に示されている2010年からの推移を見てみます。2010年時点での新成人におけるマイカー所有率は12.4%(都市部5.3%、地方14.5%)、2015年は12.9%(都市部4.7%、地方15.1%)で大きな変化はありません。また、2016年のデータを見てもおおよそ同様です。しかし翌年以降、変化が起きています。2017年は16.8%(都市部10.4%、地方19.0%)、2018年16.7%(都市部8.9%、地方19.7%)、2019年16.7%(都市部8.0%、地方19.2%)という結果に。2017年(調査は2016年11月)以降、新成人のマイカー所有率は増えています。単純に車を所有しなくなっているということはなさそうです。つまり、若者の車離れは、所有数からは立証できません。
では、同調査にある「20歳のうちに購入したいクルマ」を見てみましょう。トップはトヨタアクア、2位は日産ノート、3位はフォルクスワーゲン(Golf/Poloなど)、以下、4位日産キューブ、5位プリウスという結果です。実に堅実な車選びという感じがします。
こう見てみると、車の所有率は上がっていますが、車をステータスとして捉えているかと言うとそうでもないことがわかります。つまり、「若者の車離れ」とは「車をステータスとして捉えることからの離脱」と考えていいでしょう。ただし、6位にはレクサス、8位にBMWといった高級車もランクインしているので、車から完全にステータス性が消えているとはいい切れません。
実用的な車を「残価設定型クレジット」で買う
一方、中国のメディア「快資迅」は、日本を訪れる中国人観光客が、「街中を走る高級車の少なさ」について、「日本人はお金があっても高級車に乗らないのはなぜか」という疑問に答える記事を掲載しているそうです。その回答としては「日本の道路が狭いこと」、「公共交通機関が発達していること」、「日本人は目立つことを好まないため」と考察されています。確かにそうかも、と思わせられる部分もあります。現在の日本で売れている車は日産ノートやトヨタアクア、プリウスといったいわゆる燃費がよく実用性の高い車です。このあたりは先に挙げた「20歳のうちに購入したいクルマ」と重なっている車種も多いですが、実際にこれらは故障も少なく、燃費の良さは過去とは雲泥の差です。
一方、故障が少なく、燃費がよく、また安全性能も高く、となってくると当然新車の価格は上がります。この点に関しては、自動車販売店が「残価設定型クレジット」と呼ばれる、将来の買い取り費用をあらかじめ引いた分を支払う方法で対応しています。この方法であれば、月々数千円という支払いで車を所有することも可能です。もしかしたら、このあたりが昨今また若者が車を買い始めた理由とも関連しているかも知れません。
つまり、現代の若者は単純に車のステータス性によって購入を検討するのではなく、むしろ合理的で快適な移動ツールとして車を利用していると言えます。またここでの「若者の車離れ」とは、「車をステータスとしてみることからの離脱」であり、車そのものを拒否しているわけではないということが分かります。買い方に無理がないよう、毎月の支払いが安く済む方法であれば車を買うという選択を行っています。こう考えると、現代の若者は賢くしたたかな一面があると言えるのではないでしょうか。
<参考サイト>
・ソニー損保、「2019年 新成人のカーライフ意識調査」|ソニー損保
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2019/01/20190107_01.html
・ソニー損保、「2015年 新成人のカーライフ意識調査」|ソニー損保
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2015/01/20150106_01.html
・なぜ日本人は高級車に乗って、誇示しようとしないのか=中国メディア
http://news.searchina.net/id/1677150?page=1
・若者の“クルマ離れ”は本当か 保有率が増加|ITビジネスONLINE
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1901/10/news015.html
・『若者はなぜモノを買わないのか』(堀好伸著、青春新書)
・ソニー損保、「2019年 新成人のカーライフ意識調査」|ソニー損保
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2019/01/20190107_01.html
・ソニー損保、「2015年 新成人のカーライフ意識調査」|ソニー損保
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2015/01/20150106_01.html
・なぜ日本人は高級車に乗って、誇示しようとしないのか=中国メディア
http://news.searchina.net/id/1677150?page=1
・若者の“クルマ離れ”は本当か 保有率が増加|ITビジネスONLINE
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1901/10/news015.html
・『若者はなぜモノを買わないのか』(堀好伸著、青春新書)
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