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8割の人は知らない?細菌とウイルスの違い
細菌とウイルス。どちらも体内に入って病気(感染症)を引き起こす恐ろしいものというイメージですが、その差は何かご存じですか?
誤解されがちなのが「抗生物質はウイルスにも効果がある」ということですが、実際には抗菌薬・抗生物質は、ウイルスには効果はありません。しかし、このことを正しく理解している日本人は、わずか23.1%しかいないことが国立国際医療研究センターの意識調査でわかりました。
ということで、今回は細菌とウイルスの違いについて解説します。
ウイルスは人などの「ほかの生物の細胞に寄生して」はじめて増殖することが可能になります。細胞に侵入したウイルスはそこで次々に自分のコピーをつくると、細胞をやぶって他の細胞へと侵入し、増殖するのです。
なお、細菌による感染症では、マイコプラズマという細菌が感染して引き起こされる「マイコプラズマ肺炎」がよく知られています。
ウイルスによる感染症は熱、せき、鼻水といった諸症状が併発するのに対し、細菌の感染症は鼻水だけ、せきだけと集中して起こることが多いといわれています。
ウイルスによる感染症には、ウイルスの増殖を防ぐ「抗ウイルス薬」が有効とされています。たとえばインフルエンザであれば「抗インフルエンザウイルス薬」であるタミフルやリレンザなどが知られています。
しかしノロウイルスやデング熱ウイルス含め、ほとんどのウイルス感染症には抗ウイルス薬がありません。抗生物質に比べると作製が極めて困難だからです。そのため抗ウイルス薬のないウイルス感染症になった場合、症状に応じた治療(対症療法)をしながら人の免疫力でもって自然回復するのを待つ、という対応が取られています。
風邪薬もそれ自体がウイルスをやっつけるのではなく、諸症状をやわらげ、抑えることで、身体の回復をうながしていると考えるとよいでしょう。風邪薬の効果を最大限高めるためにも、風邪を引いたらしっかり休養をとることが大切なのです。
<それぞれの季節に活発化するウイルス>
夏:アデノウイルス(プール熱)、コクサッキーウイルス(手足口病やヘルパンギーナ)、ポリオウイルス(ポリオ)など
冬:インフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス(SARS)など
このように、夏風邪と冬風邪の違いは単純に季節の違いではなく、その環境下で活発化しているウイルスの違いとなります。
しかし近年、多くのウイルスは「人の役に立っている」ということが明らかになっているそう。
神戸大学大学院農学研究科教授の中屋敷均氏によると、実は生物の進化の過程で重要な役割を果たしてきたウイルスは多数あり、さらに「(病気を起こさないウイルスの中には)病気やストレスに対するワクチンのような効果を持つことが分かったものも少なくありません」(「EMIRA」インタビュー記事より)とのこと。
青カビからペニシリンが作られたように、「人の健康に役立つウイルス」による新薬も、近い将来、生まれるかもしれませんね!
誤解されがちなのが「抗生物質はウイルスにも効果がある」ということですが、実際には抗菌薬・抗生物質は、ウイルスには効果はありません。しかし、このことを正しく理解している日本人は、わずか23.1%しかいないことが国立国際医療研究センターの意識調査でわかりました。
ということで、今回は細菌とウイルスの違いについて解説します。
ウイルスには細胞がなく、自己増殖できない
細菌とウイルスは、一見似ているようで中身の構造はまったく違います。細菌は約1マイクロメートル、ウイルスはさらに小さい約0.1マイクロメートルという大きさの違いもさることながら、決定的な差は「自己増殖できるかどうか」です。細菌は栄養源さえあれば自分で増殖できるのに対し、ウイルスはそれができません。細胞を持たないためです。ウイルスは人などの「ほかの生物の細胞に寄生して」はじめて増殖することが可能になります。細胞に侵入したウイルスはそこで次々に自分のコピーをつくると、細胞をやぶって他の細胞へと侵入し、増殖するのです。
風邪の原因のほとんどはウイルス
一般に言う「風邪」とは正式な病名ではなく、鼻水やせきなどの上気道の諸症状(風邪症候群)を総称したものです。こうした症状を引き起こす原因のほとんどはウイルスによるもの。風邪といえばウイルス感染による症状のことだと思えばいいでしょう。なお、細菌による感染症では、マイコプラズマという細菌が感染して引き起こされる「マイコプラズマ肺炎」がよく知られています。
ウイルスによる感染症は熱、せき、鼻水といった諸症状が併発するのに対し、細菌の感染症は鼻水だけ、せきだけと集中して起こることが多いといわれています。
ウイルスに抗生物質は効かず、直接作用がある薬もごくわずか
病院で診てもらった時に、抗生物質という薬をもらうことがあるでしょう。青カビからつくられたというペニシリンが有名ですね。抗生物質とは微生物の成長を止める、細菌感染症のための薬です。よって、ウイルスには効きません。ウイルスによる感染症には、ウイルスの増殖を防ぐ「抗ウイルス薬」が有効とされています。たとえばインフルエンザであれば「抗インフルエンザウイルス薬」であるタミフルやリレンザなどが知られています。
しかしノロウイルスやデング熱ウイルス含め、ほとんどのウイルス感染症には抗ウイルス薬がありません。抗生物質に比べると作製が極めて困難だからです。そのため抗ウイルス薬のないウイルス感染症になった場合、症状に応じた治療(対症療法)をしながら人の免疫力でもって自然回復するのを待つ、という対応が取られています。
風邪薬もそれ自体がウイルスをやっつけるのではなく、諸症状をやわらげ、抑えることで、身体の回復をうながしていると考えるとよいでしょう。風邪薬の効果を最大限高めるためにも、風邪を引いたらしっかり休養をとることが大切なのです。
夏風邪と冬風邪の違いはウイルスの違い
この時期になると「夏風邪」という言葉を耳にしますね。夏風邪とは高温多湿を好むウイルスが増殖されることによって引き起こされる感染症です。対して冬風邪は、低温乾燥を好むウイルスが増殖することで起こります。<それぞれの季節に活発化するウイルス>
夏:アデノウイルス(プール熱)、コクサッキーウイルス(手足口病やヘルパンギーナ)、ポリオウイルス(ポリオ)など
冬:インフルエンザウイルス、RSウイルス、コロナウイルス(SARS)など
このように、夏風邪と冬風邪の違いは単純に季節の違いではなく、その環境下で活発化しているウイルスの違いとなります。
実はウイルスにも「有益な」ものがある?
体内に住む常在菌や、食べ物を発酵させる菌をはじめ、細菌には人に対して無害、もしくは有益な菌があることはご存じの方も多いでしょう。それに対し、ウイルスは人にとって有害なものでしかないという印象があります。しかし近年、多くのウイルスは「人の役に立っている」ということが明らかになっているそう。
神戸大学大学院農学研究科教授の中屋敷均氏によると、実は生物の進化の過程で重要な役割を果たしてきたウイルスは多数あり、さらに「(病気を起こさないウイルスの中には)病気やストレスに対するワクチンのような効果を持つことが分かったものも少なくありません」(「EMIRA」インタビュー記事より)とのこと。
青カビからペニシリンが作られたように、「人の健康に役立つウイルス」による新薬も、近い将来、生まれるかもしれませんね!
<参考サイト>
・抗菌薬意識調査レポート 2019(国立国際医療研究センター)
http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20190927_report_press.pdf
・細菌とウィルスの違い、知ってますか?(東京医科大学八王子医療センター)
http://hachioji.tokyo-med.ac.jp/midori/midori.php?gid=113
・くすりの話 2 抗生物質ってなに?(全日本民医連)
https://www.min-iren.gr.jp/?p=26736
・特集「今、知っておきたい「抗生物質」の正しい使い方」(ソニー生命保険株式会社)
https://cs.sonylife.co.jp/lpv/pcms/sca/ct/special/topic/index1702.html?lpk=
・感染症の基本 細菌とウイルス(国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)
http://amr.ncgm.go.jp/general/1-1-2.html
・感染症の治療:抗菌薬について(関東労災病院)
https://www.kantoh.johas.go.jp/hanasi/tabid/487/Default.aspx
・抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)解説(日経メディカル処方薬事典)
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf830c.html
・冬の風邪とは大違い!夏風邪「プール熱」「手足口病」(株式会社オプテージ eo健康)
https://optage.co.jp/info/siteinfo.html
・私たちのDNAは、ウイルスで出来ている!? 最新研究が塗り替えた驚きの「生命」イメージ(講談社「現代新書」)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48214
・人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体(EMIRA)
https://emira-t.jp/special/7814/
・抗菌薬意識調査レポート 2019(国立国際医療研究センター)
http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20190927_report_press.pdf
・細菌とウィルスの違い、知ってますか?(東京医科大学八王子医療センター)
http://hachioji.tokyo-med.ac.jp/midori/midori.php?gid=113
・くすりの話 2 抗生物質ってなに?(全日本民医連)
https://www.min-iren.gr.jp/?p=26736
・特集「今、知っておきたい「抗生物質」の正しい使い方」(ソニー生命保険株式会社)
https://cs.sonylife.co.jp/lpv/pcms/sca/ct/special/topic/index1702.html?lpk=
・感染症の基本 細菌とウイルス(国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター)
http://amr.ncgm.go.jp/general/1-1-2.html
・感染症の治療:抗菌薬について(関東労災病院)
https://www.kantoh.johas.go.jp/hanasi/tabid/487/Default.aspx
・抗インフルエンザ薬(ノイラミニダーゼ阻害薬)解説(日経メディカル処方薬事典)
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf830c.html
・冬の風邪とは大違い!夏風邪「プール熱」「手足口病」(株式会社オプテージ eo健康)
https://optage.co.jp/info/siteinfo.html
・私たちのDNAは、ウイルスで出来ている!? 最新研究が塗り替えた驚きの「生命」イメージ(講談社「現代新書」)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48214
・人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体(EMIRA)
https://emira-t.jp/special/7814/
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