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DATE/ 2019.11.14

離職率が高いのは飲食業!最も低いのは〇〇業!

 日本では少子高齢化が急速に進み、さまざまな産業分野で人材不足が深刻化しています。一方で雇用は流動的な傾向が高まり、入社して3年以内の若者の離職率は約3割とも言われ、優秀な人材確保も困難になっています。

 離職率の低さは、「良い会社」を判断する基準になりつつあります。今や離職率は会社の価値を左右するスコアでもあるわけです。離職率の格差は、会社間だけでなく、業界間でも顕著に拡大しています。

 飲食業界や介護業界の離職率が高いことはよく知られていますが、さて、最も低い離職率の業界はご存知ですか。

宿泊業・飲食サービス業のメリット

 厚生労働省が発表した「平成30年雇用動向調査」には、業界別の入職率と離職率が記載されています。離職率が最も高いのは、宿泊業・飲食サービス業で26.9パーセント。ただし、入職率が最も高いのも宿泊業・飲食サービス業です。

 これは何を意味しているのかというと、それだけ転職しやすいということです。どこへ行っても飲食店とホテルはありますね。これは働く人にとってはメリットと言っていいでしょう。

 一方、よくブラック体質を批判される業界ではあるので、「このお店でずっとやっていきたい」と思えるような労働環境の整った職場はなかなか見つからないのかもしれません。

二大高離職率業界とは?

 2番目に離職率が高いのは23.9パーセントの生活関連サービス業・娯楽業。宿泊業・飲食サービス業とともに他を圧倒しています。二大高離職率業界と名付けることができます。
 
 生活関連サービス業・娯楽業はクリーニング業や理容業、銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業など私たちの生活に密着した業種です。旅行業や結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業、映画館や劇場、スポーツ施設なども含まれます。

 職業名を見て分かる通り、正社員よりもアルバイトやパートタイマーが活躍する職種が多く、生活関連サービス業・娯楽業も宿泊業・飲食サービス業と同じく入職率が高いのが特徴です。

人手不足だからこそ、賃金上昇

 さて、離職率が最も低い業種は何か。意外かもしれませんが、9.2パーセントの建設業です。そのすぐ後に9.3パーセントの複合サービス事業、それから9.4パーセントの製造業が競って続きます。複合サービス事業は、説明すると少しややこしいので、この記事では割愛しますが、郵便局や共同組合などが当てはまります。

 人手不足が危惧されている建設業の離職率がなぜ最も低いのか。その大きな理由として、賃金が上昇していることが挙げられます。人手不足だからこそ、賃金が上昇しているのです。

 どの業界にも言えることですが、建設業は若者の早期の離職率がとくに高く、これは業界の大きな課題となっています。

 若者が働きやすい労働環境を作っていくことが人手不足の解消、ひいては日本経済の成長につながります。将来の日本経済を支えていくのは若者たちです。

<参考サイト>
・平成30年雇用動向調査|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/19-2/dl/gaikyou.pdf
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授