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DATE/ 2020.05.21

ナビで最も検索されている「目的地」はどこ?

 「行きたい場所」はどこでしょう。温泉や観光スポットに、はたまた海に山に。テーマパークなら何度でも行きたいという人も多いのではないでしょうか。さまざまな場所が思い浮かびますが、地図をみて妄想したり、将来の計画を練ったりするだけでも楽しいものです。

 今回は「NAVITIME」で2019年に最も検索された「目的地」の情報を見てみましょう。その地域のおもしろい特性が見えるかもしれません。

地域別、目的地検索スポットランキング1位(2019年)

 調査はナビゲーションサービス大手の株式会社ナビタイムジャパンが発表しているものです。同社が提供する「NAVITIME」などのナビゲーションサービスにおいて、2019年に検索されたスポット情報をもとに集計されています。以下は地域別にもっともよく検索された場所の一覧です。

北海道:旭川市旭山動物園(北海道旭川市)
東北:大内宿(福島県下郷町)
北関東:草津温泉(群馬県草津町)
南関東:幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区)
甲信越:富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)
北陸:福井県立恐竜博物館(福井県勝山市)
東海:伊勢神宮内宮(三重県伊勢市)
近畿:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(大阪府大阪市此花区)
中国:出雲大社(島根県出雲市)
四国:大塚国際美術館(徳島県鳴門市)
九州:太宰府天満宮(福岡県太宰府市)
沖縄:沖縄美ら海水族館(沖縄県本部町)

 北関東や東北では温泉地が目立ちます。東海・中国・四国・九州では神社や美術館といった「自然・文化的施設」、南関東や甲信越、近畿ではイベントホール・公会堂、スタジアム・球場、遊園地といった「レジャー施設」がトップになっています。ではもう少し細かく地域別の上位を見てみましょう。

「レジャー施設」と「自然・文化的施設」

 大きく「レジャー施設」と「自然・文化的施設」という二つの軸で地域を見ることはできそうです。それぞれの地域のトップ5までを見ると地域的傾向がもう少しわかります。たとえば人口の密集する南関東での1位は幕張メッセ(イベントホール)でしたが、2位は東京ディズニーランド(遊園地)、3位は東京ビッグサイト(イベントホール)、4位は東京ドーム(スタジアム)、5位は浅草寺(寺院)という順です。4位までがおおよそ「レジャー施設」です(イベント会場はビジネス利用の場合も多いと思いますが便宜上レジャー施設としました)。

 同様に人口の密集している近畿は、2位に京セラドーム(スタジアム)、3位伏見稲荷神社(神社)、4位姫路城(城・城址)、5位アドベンチャーワールド(遊園地)となっています。3位、4位は「自然・文化的施設」が入っていますが、1位、2位、5位は「レジャー施設」です。日本の3大都市圏のもう一つ、東海もみてみましょう。1位は伊勢神宮内宮(神社)で「自然・文化的施設」ですが、2位は御殿場プレミアム・アウトレット(アウトレットモール)。3位は白川郷(史跡)、4位はナゴヤドーム(スタジアム)、5位ナガシマリゾート(その他レジャー)と、「レジャー施設」と「自然・文化的施設」のどちらも入っている印象です。

 一方、中国地方でのトップは出雲大社(神社)でした。ここでの2位は鳥取砂丘(砂丘)、3位足立美術館(美術館)、4位角島大橋(橋)、5位厳島神社(神社)と、「自然・文化的施設」が多くを占めている印象です。大きく言えば、人口が密集する地域では「レジャー施設」に人が集まり、そのほかの地域では神社などの「自然・文化施設」に人が集まると言えるかもしれません。

大型レジャー施設の千葉、雄大な自然が魅力の青森、

データを都市別に見るとまた興味深い点があります。たとえば、千葉県のトップ5は以下の通り。

1位 幕張メッセ(イベントホール・公会堂):千葉県美浜区
2位 東京ディズニーランド(遊園地・テーマパーク):浦安市
3位 東京ディズニーシー(遊園地・テーマパーク):浦安市
4位 イクスピアリ(複合施設・商業施設):浦安市
5位 鴨川シーワールド(水族館):鴨川市

 すでに南関東エリアで触れたところと重なります。まず目につくのはカタカナ名ではないでしょうか。近代的人工施設の特徴かもしれません。どれも都内ではなかなか敷地を確保できない大型施設といえるでしょう。ディズニーリゾートはもちろんのこと、さまざまな大規模施設が集う千葉県はレジャー施設の聖地かもしれません。またこれとは対照的なエリアの代表は青森県。トップ5は以下の通りです。

1位 十和田湖(湖沼):十和田市
2位 恐山(その他史跡):むつ市
3位 奥入瀬渓流(渓谷):十和田市
4位 弘前城(城):弘前市
5位 酸ヶ湯温泉(温泉):青森市

 湖、山、渓谷、城、温泉と聞くだけで、自然の豊かな風景が見えてきそうです。冬は決して穏やかではないかもしれませんが、それも含めて自然の力や美を感じ取ることのできる特徴的エリアといえるでしょう。ちなみに恐山は日本三大霊山の一つで、正式名称は「恐山菩提寺」というお寺とのこと。

神社もテーマパークも非日常空間として魅力的

 「レジャー施設」と「自然・文化的施設」に大きく分けましたが、二つに共通するキーワードは「非日常」だと言えます。現実で生活している空間からちょっと離れたところで呼吸することで、私たちはリフレッシュできます。レジャー施設ではプロのスポーツを観戦したり、ライブで盛り上がったり、テーマパークで異世界に飛び込んだりすることができます。

 一方、神社や寺院、雄大な自然もまた一つの異世界空間といえるでしょう。樹木や石、森などは私たちの日常にはない景色や空気を作り出し、自然と一体化した神聖さのようなものは私たちの心を鎮めます。また、自然の豊かさの中に佇む建物の美が心を打つこともあります。神社や寺院がパワースポットと呼ばれる理由の一つは、時間の流れがはるかに穏やかでゆっくりとしたものであることも関係しています。テーマパークのような乗り物はありませんが、人の心を静かに揺さぶります。非日常で心を揺さぶられるという点について言えば、神社や寺院はテーマパークと本質的には同じかもしれません。

<参考サイト>
・『2019ナビタイム 地域別・都道府県別スポット検索ランキング』を発表│NAVITIME
https://corporate.navitime.co.jp/topics/pr/202001/31_5213.html
・言わずと知れた日本屈指の霊場・恐山には、極楽の風景と温泉があった!|旅ぐるたび
https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_1252/
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