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DATE/ 2020.12.05

なぜ映画館では「ポップコーン」を食べるのか?

2020年は『鬼滅の刃』が空前の大ヒットを記録した映画業界、コロナ禍の最中は動画配信サイトにお世話になっていた人も、久しぶりに大きなスクリーンの前でポップコーンをつまみながら映画を観たい方も多いのではないでしょうか。

 ところで《映画館といえばポップコーン》という定番スタイルはいつ頃始まったのか、また、何故ポップコーンなのかは御存知ですか? 定番化したのにはやはり深い理由があったのです。今回はそんな映画館のおやつ事情をリポートします。

ポップコーン事始め

 機械にお金を入れるとザーッと紙容器にいっぱいになるものから、カウンターで注文するキャラメルソースやチョコレートなどでコーティングされたリッチなものまで、ついつい頼んでしまう映画のお供……その始まりはやはり映画大国アメリカです。

 ご存知の通り、映画の初期はスクリーンに映像だけが映る無声映画です。音をつける技術がなかったため、映像の合間に説明文を差し挟み、BGMは生演奏、その頃は上映中の食事は耳障りであるとポップコーン含め敬遠されていました。

1927年、映像に音声のついたトーキーが現れます。これならば上映中に何かつまんでいても大丈夫だろうと、その他のスナック菓子より食べる音も小さいポップコーンが売られるようになっていきます。ポップコーンを売っているかいないかで同じ映画をかけていても売り上げがかなり違ったそうですから、さぞや人気があったのでしょう。

ポップコーンが定番化していくまさかの理由

 しかし、いろんな食べ物がある中で何故ポップコーンが定番化していくのでしょう? 

 1つには原材料の安さと、誰にでも作れて難しい技術がいらないという点があります。トーキーが始まった時代は世界恐慌と重なることもあり、あらゆるものがインフレする中の数少ない手軽に楽しめるおやつがポップコーンだったのです。

 また、もう1つの理由はポップコーンのお手軽さ、もとい、軽さにあったようです。
 高い入場券を買ってわざわざ時間を作ってやってきたのに、映画の内容がイマイチというか、かなりひどかった……誰しもそんな経験があると思います。今ならば映画批評サイトやSNSに感想を述べるのでしょうが、当時のアメリカはもっと直接的でした。
 なんと、手元のポップコーンをスクリーンに向けて投げつけたのです。軽くて手の中にたくさんおさまるし、スクリーンだけでなく間違って人に当たっても傷つかないということで定番化したのだとか……ポップコーンの紙吹雪……今やったらそれこそSNSで迷惑客だと拡散炎上してしまいそうですね。

映画館の大事な収入源

 そんなポップコーンが日本に入ってきたのは第二次世界大戦の後、アメリカ兵によって伝えられ、1957年マイクコーンという会社が製造販売を始めています。そう考えると日本でもすでに70年近く映画のお供として愛され続けているんですね。映画のチケットの売上げの割合は7~8割は配給会社側に行くので、劇場の存続はパンフレットやポップコーンの売上げにかかっているという切実な事情も定番化の一因です。

 そんなポップコーンでさえ、一部にやはり咀嚼音やカサカサやる音が気になるという声もあげられています。音や匂いは個人で防げるものではなく大変難しい問題です。けれども、その他の多くの食べ物が映画館で販売されておらず、持ち込みも禁止されているのが多いのには他にも理由があります。

 アイスクリームなどはこぼれてしまうと掃除が非常に大変になります。また、唐揚げやハンバーガー、ポテトなどは咀嚼音、においがポップコーンの比ではなく、なおクレーム・トラブルのもとになってしまうそうです。また、おにぎりなども賞味期限がすぐに切れてしまうということもあり、現状ではポップコーンにかわる食べ物は出てこなさそうです。

 昨今ようやく全席販売のできるようになった映画館、劇場ですが、コロナ対策で客席での飲食不可のところも多く、大ヒット映画でさえ映画館の救済にはならないという見方もあります。ポップコーンをつまみながら映画鑑賞のできる日々が戻ってくることを願ってやみません。

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