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DATE/ 2021.03.28

海外で通用しない日本の常識とは?

 日本と外国の常識の違いという話題はよく聞かれます。代表的なものでは、麺類を食べる時に音を立てるかどうか。国内でも蕎麦やラーメンは音を立てるけれど、パスタは音を立てないと料理に応じて使い分けている人もいるかもしれません。これは最近では比較的意識されていることかと思いますが、他にもさまざまな常識の違いがあります。こういった感覚や行動様式の違いは、時に失礼となってしまったり、トラブルを招いてしまったりすることも。日本と海外の常識のズレにどんなものがあるのか、大きなところに絞って、まずは旅のシーンとビジネスシーンに分けて見てみましょう。

鼻をすする、むやみに写真を撮る、電車で居眠り

 まずは旅のシーンで見てみましょう。海外に旅行した際、電車やトラム(路面電車)などで移動することは多いと思われます。寒い季節になれば鼻水がでますが、特に欧米圏においては電車の中などで「ズズズ」と鼻をすするのはNG。かなり不快感を与えるようです。潔くかみましょう。そういう文化なので恥ずかしいことはありません。ちなみに現地ではハンカチを使う人が多いとのこと。

 海外の風景は写真におさめたくなります。日本では人が写り込まない風景写真では特段気をつける必要はないですが、外国では気をつけたほうがよさそうです。外務省の海外安全ホームページにはいくつか事例が示されています。一つ目は「カスピ海の港で夕焼けを撮影したら、軍事港湾施設を撮影したとして逮捕された」というもの。軍事施設、空港、港湾、王宮といったところは撮影禁止の標識があったりします。また別の状況では「東アフリカの自然公園でマサイ族を黙って撮影したところ、猛烈に怒って金銭を要求された」といった事例が紹介されています。撮影されることを生業にしている人たちもいるようです。この場合本人の了解を得なければ撮影できません。また、スリが多い地域ではカメラは盗まれるリスクもあります。

 また、電車での居眠りはどこも基本的にNGだと考えておきましょう。多くの場合「スリにあうリスクが高い」ということが理由のようです。特に中東のドバイはかなり厳しいです。在ドバイ日本国総領事館によると、メトロ車内では「眠っている状況が明らかであれば罰金」とのこと。罰金の額は300 ディルハム(9000円程度)となかなかの額です。また、「車内等へのアルコールの持ち込み」や「乗り越し」なども罰金の対象です。

名刺交換、ペコペコお辞儀、お酌

 次にビジネスシーンでみてみましょう。日本では出会ったら初めに名刺交換を行います。一方、欧米ではまず相手の目を見てしっかり握手することから始めます。もちろん海外でも名刺交換は行うようですが、日本のような形式は特になく、打ち合わせなどが全て終わってからさらっと交換する程度のものだそうです。

 お辞儀は最近では海外でも知られるようになっており、悪い印象はないようです。ただ気をつけた方がいい場合もあります。国際ボディランゲージ協会代表理事の安積陽子さんによると、あまりペコペコお辞儀をすると相手に迎合しているような印象を与えるようです。ビジネスの場では誤解を生む場面もありうるので、欧米では特に意識する必要はあります。また、頻繁にペコペコを繰り返していると、単に落ち着きがないと見られることもあるようです。

 また食事やお酒の席での振る舞いは大事です。海外の人に対するお酌はNG。外国人に対して行うとお酒の強要と捉えられる可能性があり、さらにもし女性が男性にお酌すると「気があるサイン」と捉えられてしまうこともあります。また、イスラム教の国ではお酒が禁止されている場合があります。イスラム教圏で仕事をする場合だけでなく、日本でイスラム教圏の人をもてなす場合も意識しておく必要はあります。

 旅行、生活、ビジネス問わず、特に「宗教」に関する常識は、日本人が気づかなかったり軽視しがちだったりする部分かもしれませんが、トラブルを生む大きなポイントとも言えます。常識は意図せず自分の中に根付いてしまうものなので、意識していなければつい振る舞いとして出てしまいます。こういった意味でも、相手の常識を知ることと同時に自分たちの常識をしっかり意識化すること、この両面が必要なのかもしれません。

<参考サイト>
海外旅行では要注意! 日本ではOKでも海外ではNGなマナー違反12選||マイナビ学生の窓口
https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/43713
海外邦人事件簿|Vol.54 写真撮影は慎重に|外務省 海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/jikenbo/jikenbo54.html
メトロ内の「居眠り」等について|在ドバイ日本国総領事館
https://www.dubai.uae.emb-japan.go.jp/newhp/20111122safety_att.pdf
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西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授