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DATE/ 2021.08.10

欧州で義務化される「ISA」車とは?

 車の安全技術が高度化しています。車間距離が詰まったり、障害物を確認したりすると自動的にブレーキがかかる衝突被害軽減ブレーキや車間距離制御装置、ペダル踏み間違い時加速抑制装置などなど、次々に安全装置は開発されています。ヨーロッパではさらに、車が自動的に速度制限する「ISA(Intelligent Speed Assistance)」と呼ばれる技術が標準化される動きになっています。ではISAとはどのようなものなのでしょうか。

ISAは車が自動的に速度調節する技術

 車がスピードを出し過ぎているときに発動する機能としては、スピードリミッターがありますが、これとは異なるようです。スピードリミッターは、どういった場合でもおおよそ一定の速度に達した時に働くのに対して、ISAは自ら道路標識や地図情報を確認して制限速度を判断し、ドライバーに知らせたり、アクセルペダルを重くして自動的に速度調節したりする機能です。

 もちろん状況に応じて、追い越しや一時回避で速度を上げる必要がある場面もあります。こういった場合は加速を可能にするということです。いくつかの技術があるようですが、たとえばフロントカメラやGPS情報を総合して、車が速度を状況判断するといったことが考えられそうです。車が状況に応じて判断するという点で、まさにIntelligenceな機能です。

スピード出し過ぎ事故は世界で多発

 このISAは2022年7月には、EU加盟27カ国と、その周辺国であるイギリス、スイス、ノルウェーにおいて、すべての新型車での装着を義務化するとのことです。また、2024年7月からは販売されるすべての新車に装着義務が生じるそうです。

 背景には、EU圏内での交通死亡事故のうち、約30%が速度超過に直接関係しているというデータがあるようです。また、アメリカでもスピードの出し過ぎによる事故が多発しています。連邦運輸道路交通安全局(NHTSA)の調査によると、直近データである2018年の交通事故死亡者の26%は速度超過が原因です。この実数は9378人に及んでいるとのこと。

 日本での交通事故死亡者は2020年のデータで2839人。アメリカの実数に比べると少なく感じますが、それでも年間3000人近い人がスピード超過に関連して死亡しています。日本でも対策が必要なことは疑いようがないでしょう。また、昨今の世の中で話題になっている「あおり運転」に対しても効果が見込めるのではないか、という話もあります。

課題もある

 一方、まだまだ課題もあるようです。内閣府の「最高速度違反による交通事故対策検討会、中間報告書」では、制限速度のデータベースが全域で利用可能となっていないこと、搭載を義務付けした場合ISAシステムが誤作動した場合や古いデータが供給された場合の法的な責任があるといった点が課題として挙げられています。

 こういった課題は残りつつも、今後日本でもISAは義務化されるといった見方が多いようです。車載カメラから状況を判断する技術は、この10年でかなり進歩してきました。さらにこの先、GPSや三次元地図ダイナミックマップといったデジタル地図情報の整備が進むようです。2017年から日本の国土交通省もISAの採用について検討してきました。日本でISAが義務化されるまでには、そう時間はかからないかもしれません。

<参考サイト>
日本でもいずれ強制的に「速度が出なくなる」可能性も! 欧州で装着義務化される自動速度抑制装置とは|WEB CARTOP
https://www.webcartop.jp/2021/06/726117/
最高速度違反による交通事故対策検討会 中間報告書 第5章
最高速度違反による交通事故対策の現状と今後の動向等|内閣府
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/max-speed/chukan/pdf/s6-1.pdf

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