社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2021.08.16

なぜ軽自動車のナンバープレートは黄色なのか

 自動車のナンバープレートにはいくつかの種類があります。最も一般的なのは白地に緑文字です。これは自家用の普通車や小型車に使用されています。この次によく見かけるものが「黄色に黒文字」ではないでしょうか。これは主に自家用軽自動車に使用されます。ではなぜ、自家用軽自動車のナンバープレートは黄色なのでしょうか。

黄色ナンバーは1975年から

 ナンバープレートはもともとアメリカで馬車の所有者を表すために利用され始めたものだそうです。日本では1907年(明治40年)に装着が義務付けられました。1919年には色の規定も設けられたようですが、この時には地域によって異なります。全国で統一されたのは1951年の道路運送車両法でのこと。さらに普通車(登録車)が今と同じ色になったのは1962年。この時までは軽自動車も普通車と同じでしたが、こののち1975年に黄色に変更されています。

 黄色になった理由は、視認性の高さがあるようです。国土交通省によると、軽自動車と普通乗用車で分けた理由は、「高速道路での料金や最高速度の規定がそれぞれに異なっていたから」とのこと。当時は料金所での判別を容易にしたり、高速道路での取り締まりをしやすくしたりする必要がありました。ただし今では高速道路での最高速度はどちらも100km/hとなり、ETCの普及で係員が車を見分ける必要性もあまりなくなりました。色を分けた意味は今では希薄化してきているようです。

軽自動車が戦後の日本の物流を支えた

 また、普通車や小型車のナンバープレートには、取り付けるためのボルトの上にキャップがあります。これは「封印」といって発行した運輸支局に登録されたことを意味しています。一方で、軽自動車にはこれがありません。この点は2種の間に大きな違いがあることを示しています。普通車や小型車は車両情報を運輸支局へ「登録」するのですが、軽自動車は軽自動車検査協会へ「届出」するだけの簡易的なもの。

 こうして登録された普通車・小型車は「登録車」と呼ばれ、ナンバープレートは「自動車登録番号標」と呼ばれます。一方、軽自動車のナンバープレートは「車両番号票」と呼ばれます。違いの背景には軽自動車の歴史が絡んでいます。軽自動車が世の中に出てきたのは戦後の復興期。この頃の軽自動車は3輪オートバイに被せ物をした程度のものですが、貧しい時代での簡単便利な荷物輸送手段として大活躍します。日本が急速に成長するとき、日常で必要不可欠な物流手段は軽自動車でした。まずは、手軽に使えることが最優先されてきたということのようです。

現在の物流を支えるのは黒ナンバー

 こういった軽自動車の役割は、今では「黒ナンバー」に引き継がれています。装着している車でよく見かけるのは、荷物配達の車です。このナンバープレートは事業用の軽自動車(事業用軽貨物車)を表しています。この「黒ナンバー」は比較的取得しやすく、さらに営業用車両なので黄色ナンバーの車と比べて自動車重量税や軽自動車税が安くなるなど、さまざまなメリットがあるようです。

 ただし「黒ナンバー」を付けることができるのは、事業用の「貨物車両」に限定されます。貨物車と認定されるにはいくつかのルールがあります。たとえば「前席より後ろを最大限荷物が置けるようにした状態の床面積が、軽自動車は0.6平方メートル以上確保されている必要がある」といったもの。こういったいくつかの基準を満たしていれば、中古で購入した軽自動車であっても黒ナンバーを取得することは可能になるようです。

<参考サイト>
なぜ軽ナンバーは黄色? なぜ普通車と色が異なる? 複雑な数字の意味とは|くるまのニュース
https://kuruma-news.jp/post/362737
軽自動車の歴史|軽自動車検査協会
https://www.keikenkyo.or.jp/information/information_000026.html
黒ナンバーの車ってなに?|CarMe
https://car-me.jp/articles/11209

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害

高度成長のために頑張った日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の評価を得たが、その後の日本企業の凋落、競争力の低下を考えると、その弊害を感じずにはおられない。読書人口が減っている現状をみると、いつのまにか「世界...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/12/01
2

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
3

ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係

ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係

熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か

お酒やコーヒーなど世の中には睡眠に良くないのではないかといわれるものがある。また、現代においては特に、スマホの「ブルーライト」が睡眠には大敵だといわれているが、それらは本当に悪者なのか。一般に良い睡眠を妨げると...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/30
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
4

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る

史料読解法…江戸時代の「全国の藩校ランキング」を探る

歴史の探り方、活かし方(6)江戸時代の藩校レベルを分析

江戸時代の藩校に関する研究は多いが、当時は藩ごとに小国家を形成していたため、学力水準を全国で比較したものは見当たらない。では、あえて「全国藩校ランキング」を考えるとすると、どの藩の藩校が「トップ校」になるのだろ...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/29