何回説明しても伝わらない問題と認知科学
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『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
今井むつみ(一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事/慶應義塾大学名誉教授)
「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどういうことなのか。情報量の多い世界の中で「確証バイアス」や「後知恵バイアス」などバイアスが果たす重要な役割について、『100万回死んだねこ』『わたし、残業しません。』という本を取り上げながら解説する。(全3話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:13分40秒
収録日:2025年5月12日
追加日:2025年11月9日
カテゴリー:
≪全文≫

●「確証バイアス」なしで人間は生きられない


―― まさにいま(第1話で)先生がおっしゃいましたように、そこの部分の先生の思いと実際に社会に出てどうなのか、あるいは人を理解する、自分の言うことを理解してもらうというのがどういうことかというのがとても結びついた本だと思っています。

 先ほど(第1話で)先生がおっしゃった、人間の記憶容量には限界があるということで言うと、本(『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』)の中では、1ギガバイトしかないのだという数字を上げておられます。

今井 はい。

―― スマートフォンでありますとか、ちょっとしたメモリースティックと比べても圧倒的に少ない記憶容量なので、ある意味では必然的に、先ほど先生がおっしゃったスキーマということで、自分で認知の形をつくって、これはもうこういうものなのだと思ったほうが、情報をはるかに圧縮できる。ということで、どうしても人間はそういうことをやってしまうので、そこにどうしてもバイアスが生まれたりするということが出てきてしまうというご説明も、非常に分かりやすく読ませていただいたのです。

今井 はい。

―― このご本の中では具体的に、いくつかの認知バイアス、例えばこういうものがありますということでご解説をとても具体的にいただいているのですが、先生、この(テンミニッツ・アカデミーの)講義でも、いくつかその事例を教えていただいてもよろしいでしょうか。

今井 そうですね。1つには、人間のなくてはならないものとして、よく確証バイアスがいわれます。確証バイアスはあまりよくないことのように受け止められているではないですか。

―― はい。

今井 でも確証バイアスがないと、私たち人間は生きられないです。確証バイアスを私はむしろ「マイワールドバイアス」といっているのだけれど、要するに世の中、世界に向かい合って常に外界にものすごい大量の情報があるわけです。それは今、向かい合っている、お話をしている人の言語情報だけではなくて、どこかで音が鳴っていたりとか、目の前を何かが通り過ぎたりとか、常にものすごくたくさんの情報があって、その中でどの情報に注目するべきなのか。むしろ注目するべきというよりは、どの情報を無視しなくてはいけないのかがものすごく大事なのです。情報の抑制です。

 だから、大事なことだけに注目をして、そ...

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