「デザイン思考」を活かすには
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
イノベーションには「デザイン」という要素も含まれる
「デザイン思考」を活かすには
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
慶應義塾大学大学院教授・曽根泰教氏が、「デザイン思考」の重要性を解説する。デザイン思考とは、デザイナーの感性を活かす方法で、商品開発のみならず社会システムにも応用できる。東京オリンピックの問題が象徴するように、全体のコンセプトが明確でないと、事態は迷走してしまう。政治や制度設計にも、デザイン思考の発想を活かすべきだ。
時間:8分28秒
収録日:2015年9月15日
追加日:2015年10月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●コンセプトが不明確な2020年の東京オリンピック


 これから「デザイン思考を活かすには」というお話をします。「デザイン思考」というのは聞き慣れない言葉で、「デザイン・シンキング」という言葉を聞くのが初めての人もいるかもしれません。

 実は、2020年の東京オリンピックを契機に、いろいろな議論が出てきました。新国立競技場の案は、予算をオーバーしてしまうのではないか。エンブレム問題は著作権に抵触しているのではないか。いや、そんなことはないが、批判が強いので変えるとも言われます。いずれも仕切り直しをせざるを得ないようになっています。

 このシリーズで東京オリンピックに触れたことは何度かありますが、その際、東京オリンピックを何のためにやるのかという中心的なコンセプトが定まっていないと批判をしたことがあります。1964年と2020年では全く違うわけですね。アジアで初めての新興国として工業化をし、これから経済成長していくという東京オリンピックに対して、2020年、成熟した東京、日本というものが、世界に何を訴えていくのか。ロンドン・オリンピックの成熟都市と、東京とでは何が違うのか。

 そういう意味で言うと、イスタンブールがイスラム圏最初のオリンピックだというのは、分かりやすいメッセージだったわけです。それに対して、東京が世界に伝えるメッセージは一体何なのか。それが決まってないから、競技場もエンブレムも、よく分からないものができてしまう。

 ですから、今さらながら、1964年の亀倉雄策氏のエンブレムは、非常に分かりやすかったと言えます。日の丸だから分かりやすかったというよりも、当時の日本が世界に訴えたいこと、これから成長し、これからアジアだけではなくて世界をリードしていく日本だということは、明確に伝わっていたと思います。


●デザイン思考は社会もデザインする


 デザインに興味を持たれたかと思いますので、ここでデザイン思考とは何かを説明します。デザイン思考というのは、さまざまな人がさまざまな言い方で定義をしていますので、ここではティム・ブラウンの定義を私なりに縮めます。デザイン思考とは「デザイナーの感性と方法を用いて、人々のニーズに見合うように、可能な技術と実行可能なビジネス戦略を、顧客価値と市場機会に転換させる専門的な手法である」。この定義は、後ほどテキス...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
岸信介と日本の戦前・戦後(1)毀誉褒貶相半ばする政治家
「昭和の妖怪」岸信介の知られざる実像を検証する
井上正也
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮

人気の講義ランキングTOP10
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫