●従来型金融政策の限界とその理由
最近、金融政策で景気のいい話がずいぶん出ています。特に「日銀法を改正しろ」「日銀総裁を代えたほうがいい」「インフレターゲットを目指せ」「金融緩和をどんどんやれ」「無制限にお金をつぎ込め」などという説がありますが、これは非常に危険な要素が大きいわけです。
それはなぜかと言うと、たしかに金融政策のほうが、財政政策よりも最近の経済学者の主流ではあるのですが、この金融政策は、従来の方法では日銀が市中にお金を流し、ベースマネーを増やすことによって、銀行が貸し出し、銀行が貸し出すことによって信用創造が生まれるという考え方でしたが、ここ(銀行の貸出)が滞って半分ぐらいは国債を買っているわけです。ですから、これはもう手法として限界があります。
また、もう一つは「日銀が資産を買え」ということです。債券あるいは不動産の証券を買い込むことによって、市中にお金を流す。それは、日銀が買った分、金融機関なり市場なりがそこを埋めるだろう、だからお金が出るだろう、という理屈付けがされます。ただ、これは中央銀行のバランスシートを毀損します。どのぐらい毀損するか、これはリスクに依存するわけです。
ですから、手法としてはあり得る手法ではあるけれども、簡単ではありません。
●インフレターゲット論の欠陥
では、無制限にお金を供給することによってインフレが起きるのだろうか。たしかに起きるかもしれませんが、それはどこに起きるのかと言うと、バブルの形で起きやすいのです。
そういう意味で言うと、インフレターゲット論、あるいはこのような緩和論というのは、実体経済の人から言えば、「お金は余っていますよ」つまり、「現実は運用先がないんですよ」ということになります。運用先がないということはどういうことかと言うと、投資をしてきちんとしたリターンを取れるところがないということであり、これが最大の問題です。
そこを解決しないで、お金だけをじゃぶじゃぶと溢れさせれば、名目的な物価は上がるかもしれませんが、上がったところで現実の経済、実体経済が回復するとは限らないというのが、これが一つの欠陥なのです。
●消費者物価指数だけを見てはいけない
インフレターゲット論は、ずいぶん長いこと議論されていますが、ここには問題があって、1990年頃、日本でバブル発生した頃、赤羽隆夫さんという元経済...