●日本の都市の遅れ―規制の足かせで高層化に遅れをとる東京
それから都市、住宅について。
日本の都市は非常に遅れているということは、町を歩いていれば分かります。他のアジアの国と比べればすぐに分かることです。
日本で一番高い建物は東京都庁と六本木ヒルズです。高さ260メートル。クアラルンプールに行けば、480メートルのペトロナスの建物が2本立っています。台湾に行ったら500メートル。上海には480メートルの森ビルがあります。あれだけ高いものを建てると何が起きるかというと、周辺の二乗した面積がグリーンになるのです。ニューヨークは前からそうなっています。なぜ日本はやらないのか。技術的問題か。そうではなくて、大震災の後でわかったことですが、倒壊したのは小さな低層ビルで、高層ビルはみなOKなのです。日本の技術は世界最高なのです。
では、なぜやらないのか。しかし一方で、なぜ東京にはツカイツリーが建っているのかというと、あそこだけ区域規制が外れているのです。規制から外したのか、外れているところに建てたのか、東武が何かしたのかは分かりませんが。東京は、規制などみな外したらいいわけですよ。他の国は600メートル、700メートルの超高層ビルを建設しているのに日本は300メートルのレベルですからね。
それはほとんど国ではなく、東京都の規制なのです。都知事には原発問題より、こうした都市問題に取り組んで欲しいですね。
●東京の良さを生かした都市計画を
規制を外すとどういうことが起きるかというと東京はすごいことになります。今、東京の夜間人口は1300万、これに対して昼間人口は3000万近いのです。都市部がこのようになっている国は世界にありません。パリは夜間人口のほうが多いくらいで、普通は1対1なのです。
1対1だと痛い通勤の「痛勤」がなくなるのです。日本は2000万近い人が、往復で2時間から4時間もwasteしている。膨大な量です。
これが解放されると何が起きるのか。例えば高層ビルの上に住んで下にオフィスがあってその下にショッピングセンターがあったら、一日その中で用は足りるということです。6時に仕事が終わったら夜中まで5~6時間友達と付き合えるし、映画演劇何でもできる。
私が横浜に住んでいたときは、夜の会合にと言われても、う~ん、ちょっと…。朝の会合に誘われても、ちょっと、と考えざるを得なかった。今は7時でも11時でもOKです。15分でどこにでも行けますから。実は、娘が住んでいたところを出てもらって、僕が住んでいるのですが、東京の都心に住むことがこんなにいいことかと思いますね。
なので、こういった都市計画をやりましょう、ということです。できますから。そうしたら東京はすごいことになります。
また、東京は安全です。財布を落としても返ってくる都市など、世界では東京しかありません。5分歩いたら必ず公共交通に到達するこんな都市もありません。そして運転手さんが10秒の遅れを気にする。こんな国もありません。これだけいいものを持っていながらスペースを使えない、時間も使えない、何をやっているんだ、ということです。特区というのがあるから使えばいいわけです。
●過剰供給で流通しない日本の「不動産」事情
それから住宅。これは、日本は過剰供給なのです。日本には5800万戸の住宅があります。世帯数は5000万です。800万戸は空き家です。住宅の価値は、木造は25年するとゼロになる。鉄筋は30年でゼロ。これは建設庁がそう決めたのです。私は、住宅問題委員長をやっていますから、こういったお役人に「何か他意があるのか」と怒鳴りつけていましたけれど。
こうした過剰供給は、日本の住宅が流通しないからです。流通速度はアメリカの7分の1、流通しないから住宅がダメになってしまうのです。
流通を進めるためにはインフラがあります。それは品質評価を徹底的にすることです。騙されたら流通しません。それから標準化をする。そして、生前贈与をする。こういうものが日本では大変に遅れているのです。
だから、日本の住宅は財産にならない。日本では「不動産」と言いますね。諸外国では「エクイティ」と言っています。「不動産」と言うと一度入ったら動けなくなる、という意味だと思います。
例えば、8000万円のマンションを買ったら、ライフサイクルコストはだいたい2億円近いのです。大卒のよっぽど運のいい人で、生涯所得は3億5000万円くらいですから、8000万円のマンションを買った途端に、動けなくなってしまうわけです。しかも、売れないし。だから「不動産」と言うのです。要するに地獄なのです。
●日本の不動産地獄は高度成長時代の負の遺産
まして、こういった現象は、高度成長時代に全部できたのです。なぜできたのか。
どんどん経...