ポストモダン型戦争と第二次冷戦
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「第二次冷戦」と呼ぶ現在の緊張状態をもたらした背景
ポストモダン型戦争と第二次冷戦(1)緊張の構造
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
いま、中東はどうなっているのか。歴史学者・山内昌之氏は、2008年のグルジア戦争から2014年のクリミア併合、そしてシリア戦争でさらに緊張の高まる現在を「第二次冷戦」と定義し、世界はいま、一つの歴史的局面を迎えているという。国際政治の構造を読み解くシリーズ講話。(全3話中第1話目)
時間:10分31秒
収録日:2015年12月14日
追加日:2016年1月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●「戦争が日常」という中東の現実


 皆さん、こんにちは。

 現在の社会情勢は、中東、ウクライナなどを中心に混迷を極めているどころか、現実に戦争が行われているのが現状です。私たちは、江戸時代270年の歴史を通して国を閉ざし、しかしながら、そこで「パクス・トクガワーナ(徳川の平和)」ともいうべき未曽有の平和状態を経験してきました。その後、昭和10年代前後の15年ほどを例外として、日本はどちらかというと一国平和主義に徹し、平和であることが普通であるという状態に、誠に幸せなことに、日本人は慣れてきました。しかし、日本人として現在の中東を見るとき、困惑し、かつ時には幻滅する機会になることは、すでに皆さん自身も経験したことが多いのではないかと思います。

 中東では、大きな戦争が度々行われています。イスラエル対アラブという構造で考えてみても、4回にわたる中東戦争。米欧、特にアメリカによって外から持ち込まれた戦争ともいうべき湾岸戦争とイラク戦争。そして、大規模なものだけで、レバノン戦争と呼ばれるものは2回もあり、かつパレスチナ自治区のガザをめぐるイスラエルとパレスチナのイスラム過激派組織ハマスとの間の事実上の戦争であるガザ戦争も2回にわたって行われています。

 こういう中東においては、戦争や戦火を日常的に経験しているという不幸な現実があります。特にアラブの市民の目から世界を見ると、大変残念なことに、そこには日本人とはまったく異質のものが浮かび上がってきます。つまり、中東では戦争こそが日常であり、平和は非日常であるという、すこぶる権謀術策に富んだ、言ってしまえばマキャベリズムの渦巻く遺憾な現実が存在するということです。


●米欧に勢力を拡大する非国家テロ組織


 モダン(近代)あるいは近代を原理とするモノの考え方のモダニズムが、自由や人権、民主主義という意味を失ったかのように思われる時代、あるいはそうした成立条件が失われた時代を仮に「ポストモダン」と呼ぶと、現在、私たちはこのポストモダンの時代において、誠に不幸な戦争や争いが繰り広げられているのを見ることができます。

 モダンといえば、「プレモダン」という言葉があります。つまり前近代です。そして、モダンがあり、ポストモダンがあるのです。中東の歴史と政治が、現在皆さんがご覧になるように、すこぶる複雑であり、時に不可...

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