ポストモダン型戦争と第二次冷戦
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ISとのポストモダン型戦争で最前面に立つロシアのリスク
ポストモダン型戦争と第二次冷戦(3)プーチンの意図
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
「ロシアが、いまやシリア情勢の最大プレーヤーで間違いない」と、歴史学者の山内昌之氏は喝破する。では、ロシアはいま、シリアやトルコにどのような影響を及ぼしているのか。山内氏がプーチン大統領の意図と中東情勢を細やかに分析する。(全3話中最終話)
時間:13分15秒
収録日:2015年12月14日
追加日:2016年1月18日
カテゴリー:
≪全文≫
 皆さん、こんにちは。

 前回、私は、現在中東やヨーロッパにまたがる形で行われている戦争や大規模テロを「ポストモダン型戦争」と定義しました。この戦争は、アメリカやヨーロッパに生まれた若者たちが受けている就職差別、あるいは人種的な偏見に起因する社会的不満を基盤に起こったという側面が確かにあるかもしれません。しかし、私はそれ以上に、イスラムを主観的に解釈したイデオロギーや文化観を絶対視するイスラム国が、一種の「文明間衝突」の亜種として、自己実現的に西洋を挑発していることではないかと考えています。

 中東では、第二次冷戦とポストモダン型戦争が複合危機をもたらしていますが、その責任の一端は、オバマ大統領その人にあると言ってよいでしょう。アメリカは、北シリアの「クルド分離主義者」を支援する一方で、アラブの春以降、アサド政権と対峙してきた「アラブ人スンナ派の穏健派勢力」の育成に失敗してきました。最近の反政府派による民兵連合を「シリア民主軍(SDF)」と呼んでいますが、シリア民主軍は、現状、アサド政権には銃を向けず、クルド人とともにイスラム国と戦う仕事に専念しています。これは、アサド政権の打倒が、いまのアメリカ政府にとって最優先事項ではなくなっていることを示唆しています。

 最近、オバマ大統領は、自らが関与してきたイラク問題をアメリカが処理する代わりに、とうてい自分の能力を超えるシリア問題の処理をロシアの裁量に委ねたという解釈が出てきています。これは、1916年の「サイクス・ピコ秘密協定」を思い出させます。つまり、イギリスがイラクを、フランスがシリアを分割、領有した、その秘密協定によく似ているのです。シリアでロシアの権益や勢力圏を尊重する考え方は、冷戦の論理に他なりません。一方、現在のイラクでは、シーア派イランの力が強く、アメリカの影響力には疑問符が付きます。


●ロシアはトルコを孤立させようとしている


 ロシアが、いまやシリア情勢の重大プレーヤー、いや最大プレーヤーであることは、間違いのない現実となってきました。いまやプーチン大統領は、イスラム国とのポストモダン型戦争に対応しなければなりません。そのロシアはいま、アメリカやヨーロッパ、特にアメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領が提唱した「テロとの戦い」という原理を、反アサド勢力との戦争、シリア内戦にも援用して...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
会計検査から見えてくる日本政治の実態(1)コロナ禍の会計検査
アベノマスク、ワクチン調達の決算は?驚きの会計検査結果
田中弥生
躍進するインドIT産業の可能性と課題(1)下請けから世界の中心へ
インドが世界有数のIT産業の拠点へと発展した理由
島田晴雄
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明

人気の講義ランキングTOP10
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
「ホメロス叙事詩」を読むために(4)『イリアス』の世界ーその2
『イリアス』の主人公アキレウスの怒りは何を意味するのか
納富信留
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
トランプ政権の極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
日本の財政の真実を検証する(2)なぜ財政危機は起きていないか
なぜ財政危機は起きていないのか…国債の金利のトリックを読み解く
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(3)奇矯で壮絶な親娘の生活
引っ越し93回…自炊も片付けもせず、絵に人生を捧げた親娘
堀口茉純
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸