ポストモダン型戦争と第二次冷戦
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
パリやロンドンの同時テロはISにとってシリア戦争の延長
ポストモダン型戦争と第二次冷戦(2)世界規模の複合危機
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2015年11月13日のパリ同時テロ、カリフォルニア銃乱射、ロンドン地下鉄襲撃。ISが米欧で起こしたテロはシリア戦争の延長や拡大としての遠隔地戦争だった。歴史学者・山内昌之氏が、いま世界を覆っている戦争とテロの脅威の本質に迫る。(全3話中第2話目)
時間:9分27秒
収録日:2015年12月14日
追加日:2016年1月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●世界の強国の対立がシリアを戦場にしている


 皆さん、こんにちは。

 前回触れた「第二次冷戦」という事態についてですが、この第二次冷戦は、ロシアのシリア情勢への直接的な軍事干渉や、トルコによるロシア軍機の撃墜事件を機に、ロシアとトルコの対立がますます深まっています。さらに、ロシアとイランとの同盟が強化されて、新しい段階に入りました。

 この状況は、国内レベル、地域レベル、国際レベルという3つの局面において、それぞれ違う性格の政治性が対立、もしくは結び付いているところが特徴ですが、かつてシリアで行われていたのは、国内レベルでいえば、アラブの春がシリアに波及した「シリアの春」の延長線上にあったものです。つまり、アラブの春、シリアの春を圧迫したアサド政権に対して、自由を求める自由シリア軍などの反政府勢力との内戦という局面でした。中東全体、中東の地域レベルでいうと、アサド政権を容認するかどうかをめぐる関係各国の間の代理戦争という性格を持っていました。そして、グローバルな国際レベルで語るなら、シリアは、ウクライナやクリミアと共に、第二次冷戦の中で局地的に熱戦、つまり実際の戦闘・戦争が行われる、一種のエネルギー放出の場になっています。

 冷戦を全体として維持するためには、かつてのベトナム戦争や中東戦争、インド・パキスタン戦争といったように、地域における部分的なエネルギーの放出を伴うことが必要でした。誠に残念なことですが、いまシリアは、そうした冷戦をめぐる世界強国(アメリカ、ロシア、EUといった国々)の対立の実験場になっているという非常に嘆かわしい事態が進行しているのです。


●相互依存の構造を無下に否定できないロシアとトルコ


 しかし、今回ロシアがシリア空爆を開始し、トルコ軍機によってロシアのSU‐24が撃墜されたことを機会に、ロシアは、もはや代理戦争のパトロンであるという仮面をかなぐり捨てて、シリア内戦を通常の戦争に変える立役者になってしまいました。いまや、ロシアはシリア戦争の当事者だといっても過言ではありません。

 もっとも、トルコとの軍事的緊張だけならば、ロシアにとって国家対国家の対照的な、シンメトリーとしての原理に基づく妥協や、外交的な譲歩が不可能なわけではありません。現実に、ロシアとトルコは16世紀以来12回も戦い、戦争を繰り返してきました。そし...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(4)スケジュール・マネジメント
スケジュール管理で重要な「クリティカル・パス法」とは
大塚有希子
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫