●アメリカでは日韓関係のまずさが懸念されている
先週、アメリカに行ってきました。3泊5日で20か所のアポイント、ミーティング、食事会。実質2日半で、かなり強硬なスケジュールでしたが、大変実りのある訪米だったと思っています。その印象から申し上げると、やはり日韓関係のまずさについてほとんどの人が懸念しているということです。
ある専門家が言っていたのは、「日本の安全保障の課題はいったい何なんだ?」ということです。「短期・中期では北朝鮮、中期・長期では中国。それが日本の安全保障の主要課題だろう」「北(朝鮮)にしても、例えば朝鮮半島で何かがあった場合に、在日米軍と同時に動くのは、在韓米軍である。アメリカとしては、日本と韓国に協力してもらいながら、いかにこの朝鮮半島有事に対応するかが大事なテーマになる。ところが、今のように『歴史問題』で韓国を中国側へ接近させていると、結果として、何か起きたときに日米韓の協力がうまくできないような状況になりかねない。これは、日本にとってよくないね」ということでした。
●その原因は歴史カード。きっかけは靖国、内容は慰安婦
その原因は「歴史カード」ですが、靖国については内容的に言及する人はあまりおらず、次のようなことを政府高官が言っていました。「去年の後半は、どちらかと言うと朴槿恵大統領が少し頑なすぎないかということで、批判の目はむしろ韓国に向いていた。ところが、12月26日の安倍総理の靖国参拝でその雰囲気が一変した。『やっぱり問題を複雑にしているのは、日本ではないか』という意見が強くなった」と。そういう意味では、靖国参拝が節目になったということは、ほとんどの人が言っていました。
しかし、より多くの方々が言及されたのは慰安婦の問題です。これは、やはり女性の人権の問題である。それと同時に、 河野談話や村山談話を見直すということになると、GHQ~サンフランシスコ講和条約によって日本の国際社会への復帰を自ら導いてきたと考えているアメリカへの挑戦でもある、ということです。
●日本は政策の整合性を戦略的に考えるべき
つまりは、「戦後の秩序あるいは無条件降伏によって受け入れたものを日本が見直すようなチャレンジをしているのではないか」という見られ方をアメリカではされています。歴史の修正主義、そして女性の人権をないがしろにするということで、靖国問題以上に慰安婦問題については厳しい意見がたくさんありました。
そして、これについては、「戦略的に考えてほしい」ということです。「安倍さんは、日本を強くしたいと言っている。これはベリーグッドだ。そして、集団的自衛権の見直しをして、もし朝鮮半島で何かがあったときには、対応する能力を高めようとしている。これもグッドだ。しかし、その二つがあるにもかかわらず、歴史問題をことさら持ち出すことによって韓国を遠ざけているし、集団的自衛権については韓国に危機感を持たせている。それではまったく話にならない。政策の整合性を戦略的に保つためには、集団的自衛権も必要なのであれば、やはり歴史問題などで日本がちゃんと知恵を働かせて、日米韓の協力関係をしっかり築く方向に向かうべきだ」ということでした。ここが、やはり一番大きなポイントでしたし、私自身もまったく同じ考え方を持っています。
●日本における三つのアメリカ依存 その1:情報収集能力
「では、日本はそこまでアメリカの言うことを聞かないといけないのか」という議論があります。けれども、実際的に日本の国家の存続や主権の存続を考えるならば、私は三つの大きな点で既にアメリカに依存してしまっていると見ています。望むと望まざるにかかわらず、結果的に依存しているのです。
一つは、情報収集能力です。情報収集能力とは具体的に何かというと、例えば北朝鮮の工作船が何十回来たのか、何百回来たのか、日本ではわかっていない拉致された方々もたくさんおられる。顕在化したのは佐渡沖と奄美大島沖ですが、この2回でさえ実はアメリカの情報が基になっている。アメリカの情報を得て自衛隊が目視に行き、発見したという経緯です。アメリカは、ペンタゴンだけで100機以上の衛星を持っていますが、日本には情報収集ができる多目的衛星は2機しかありません。衛星情報収集という点だけをとってもアメリカに大きく依存しています。工作船が来ているかどうかのインフォメーション、インテリジェンスでさえ、アメリカに頼っている状況です。
●日本における三つのアメリカ依存 その2:ミサイル防衛と対外情報機関
また、ミサイル防衛については、日本はほぼすべてをアメリカから購入してきた形になっています。北朝鮮がミサイルを撃った場合、日本に到達するのは約7分です。すぐさま対応しなければならないのは当然ですが、それ以前にその「...