●「アベノミクスはうまくいっているのに増税できない」は矛盾
参議院選挙で一体何が問われているのかという話をいたします。基本的に参議院選挙は、政権選択の選挙ではありません。衆議院で訴えた政権公約がどのぐらいまで進捗しているか、あるいは成果を挙げているかという「中間評価」の意味があるわけです。
そういう点で、中間評価と言っていいのかどうかと首をひねるのが、今回の選挙です。実は前回の総選挙の公約では「消費税増税を延期します。延期はもう変えません」と言って、弾力条項を外しました。ところが、またここへきて「景気が下振れするから、国民に問いたい」と言って、今回の参院選挙に持ってきたわけです。
考えてみれば、弾力条項を外しているのに、弾力条項を使って延期するというのは矛盾です。そういう意味でいうと、二度目の増税の影響を考えて、国民から「受ける」、あるいは増税をしたくない国民ももちろんいると思いますが、そうした国民の要望に沿って政治を行うことがいいことかどうか、という疑問があります。
これらは置いておくとしても、安倍政権の言う「アベノミクスはうまくいっている。しかし、増税できない。増税できる経済条件ではない」というのは、説明的には矛盾しています。短期的に消費の下振れがあるのは確かですが、ここをどう整合的に説明するかということでしょう。
●安倍政権にも野党にも、納得できる成長戦略はない
それからアベノミクスそのものについても、私が以前から指摘してきた「物価目標を政策目標にすることの誤り」が、最近では顕著に出てきています。物価目標をターゲットにするのは、因果が逆でしょう。景気が良くなれば物価が上がるわけで、物価を上がると景気が良くなるのではありません。つまり、消費税が2、3パーセント上がると消費は落ち込み、物価が2パーセント上がれば消費は下がります。だから、「国内需要が増える」「景気が良くなる」「所得が上がる」、それらの結果として、物価が上がるのです。物価を上げれば景気が良くなるというのでは、説明の順序が逆です。
ここは、政策論争として正面から議論されていない点です。なぜかというと、野党がそれに代わる経済政策を打ち出しているのかどうかが疑問だからです。岡田克也代表(民進党)は「分配と成長」と言っていますが、「分配」ということを付け足しにしたとしても...