●英ポンドと原油相場、その緊密な関係
三つ目の論点として、英ポンドを見る上での中期的なポイントを示しておこうと思います。結論からいうと、ポンドを見るにおいて重要なのは、原油相場と内外金利差だと申し上げておきます。
今見ていただいているのは、英ポンドの対米ドル相場と原油相場(「北海ブレント」という先物相場)の推移で、それぞれ「52週線」からの上振れ下振れを採取したものです。「52週線」は、ちょうど1年間の平均ということになります。そこからの上振れ下振れを取ることによって長期トレンドを排除し、数カ月単位の上げ下げがどのように変化しているのかを示しているわけです。
こうして見ていただくと、英ポンドは、原油が上がるときには上昇しやすく、原油が下がるときには下げやすいことがお分かりいただけるかと思います。
●英ポンドが「資源国通貨」の側面を持つ三つの理由
このように、英ポンドはいわゆる「資源国通貨」としての側面を持つわけですが、それには理由がいくつかあると考えられます。
一つは、北海油田の存在です。
次に、ロンドン株式市場に、資源大手のBHPビリトンやリオ・ティント、通信大手のBTが上場していることが挙げられます。これらの株式価格は、原油などの資源価格が上がると上昇します。これが英ポンドにとってもやはりプラスだという側面があると思います。
三つ目は、中東やロシアからのオイルマネーが、さまざまな形でイギリスの証券投資マーケットや不動産市場に流れ込んでくることです。旅行客もそこに含めていいでしょう。私なども出張で行ったときに、アラビアから来ている旅行客の方をやはりよく見かけます。そういった形でオイルマネーが入っていることからも、原油相場との相関が高いといえると思います。
●スコットランド住民投票と英ポンドの相関は?
2014年の9月に一度、スコットランドがイギリスからの独立を問う住民投票を行ったことがあります。今回と同じように、その時も英ポンドは随分下げたのですが、実はその時に原油も下がっていました。
このスコットランドの住民投票は、結果的に「イギリスに残留」となったわけですが、その後も原油価格が底入れしてくると、ポンド相場も底入れする動きを示しました。
つまり、その時はスコットランド問題で相場が動いているように見えたのですが、今になってみると、結果的には原油の上げ下げを反映していただけだったようにも見えます。
ところが今回は、原油が比較的底堅い動きを示しているにもかかわらず、ポンド安が明確化してきています。この数年間あまり起こらなかったことが起こり始めているということです。
●海外との金利差が、英ポンドを安値に向かわせる
もう一つ、英ポンドを見る上で重要なファクターは、イギリスと海外の金利差ということになってきます。見ていただいているグラフは、英米10年金利差と英ポンドの対米ドル相場の推移を示しています。原油と並んで金利差の影響力が大きいことがお分かりいただけます。
この金利差に関していえば、アメリカは基本的に緩やかながらも利上げ方向を向いていると考えられます。一方でイギリス側は2017年にかけて経済成長率がマイナスに落ち込むことが今、懸念されるような状況になってきています。
そういった中、ここまでの数年間、金融政策をずっと据え置いてきたイギリス中央銀行からの金融緩和観測が強まることもあり、英米金利差は米ドル有利・英ポンド不利に拡大している。今回のポンド安はこのあたりの動きを比較的素直に反映しているような側面もあるのだと考えています。