●ブレグジット問題を考える4つの観点
皆さん、こんにちは。シティグループ証券で為替相場の市場調査を担当しております高島です。今日は、イギリスのブレグジット(BREXIT)、つまりイギリスが欧州連合であるEUから離脱するという問題についてお話ししようと考えています。
今回、少々長くなりますが4つの観点を考えています。まず1点はこういったブレグジットに至った時代背景と今後の展望についてで、2点目は、英国ポンドが抱える長期的な問題、3点目は英ポンドが中・短期的にどう動くかについてです。最後の4点目は、この問題に伴って円高が進んでいますから、円高の行方を少し占ってみたいと考えています。
●ブレグジットの背景となるイギリス国民の明らかな問題意識
まず、ブレグジット、(イギリスの欧州連合からの離脱)に至った背景からお話しします。実は私自身、たまたまだったのですが6月の最終週にモスクワとロンドンへの出張がセットされており、このブレグジットの国民投票の翌週にイギリスを訪れる機会がありました。
そこで、半ば笑い話になるのですが、非常に印象的だった話があります。移動のために乗ったタクシーのドライバーさんの一人がとても陽気な人で、「どこから来たんだ? 日本からか」と話しかけてきました。「このシーズンのイギリスはすごくいい時期だ。ゴルフもいいし、ウィンブルドンテニスも始まったし、セールスシーズンだからポンド安の今、外国人には格別にいい時だろう」と言われたので、ポンドが安くなるとともに円高になったこともあり、「EU離脱を問う国民投票の後、日本人にとっては物価が安く感じるね」と私が答えたところ、そのドライバーさんはさまざまな話を熱弁したのです。
彼は50代くらいの白人で、おそらく離脱派の人だったのではと思うのですが、彼が一番強調していたのは、イギリスのことはイギリスが決めるべきだ、ということでした。つまり、EUのテクノクラート(官僚)が決めるのではなく、イギリス国民が決めるべきだ、ということをしきりに強調していました。これは民主主義の伝統もあると思います。次に「町中を見てみなさい。走っている車は皆、ベンツやBMWといったドイツ車だ。それじゃいけない」というようなことを言っていました。つまり貿易問題ということです。
また、これが最大の問題ともいわれていますが、3つ...