トルコの一番長い夜とクーデター
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「最悪の文民政府でも最高の軍事政権よりはるかにましだ」
トルコの一番長い夜とクーデター(2)最悪の文民政府
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
政治学には「最悪の文民政府でも最高の軍事政権よりはるかにましだ」という金言がある。武装蜂起が挫折した後のエルドアン政権は、この金言を盾にこれまで以上の強権性を示していく可能性があると、歴史学者・山内昌之氏は言う。(全3話中第2話)
時間:10分56秒
収録日:2016年7月20日
追加日:2016年8月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●トルコ軍蜂起と似ていたソ連8月クーデター


 皆さん、こんにちは。今回トルコで起こった軍による武装蜂起の失敗について、引き続きお話ししてみたいと思います。

 この武装蜂起を見て私がすぐに思い出したのは、現代史においていえば1991年のソ連におけるクーデターでした。

 当時はペレストロイカが行き詰まり、ロシア共産党が権威を失墜する中でした。再び改革を進めようとする党書記長だったミハイル・ゴルバチョフ大統領は、当時のロシア連邦ボリス・エリツィン大統領とカザフスタン共和国ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領の二人と協議して改革を進めようとしていました。

 新連邦条約が調印されるはずだったのは1991年8月20日でしたが、その直前にゴルバチョフは、静養中だったクリミア半島において自分の子飼いの部下たちから幽閉され、政治の表舞台から一時去ったかに見える事件が起こりました。当時のKGB(国家保安委員会)ウラジーミル・クリュチコフ議長、ゲンナジー・ヤナーエフ副大統領、そしてヴァレンチン・パヴロフ首相らが「国家非常事態委員会」と名乗り、クーデターを起こしたわけです。

 軟禁されたゴルバチョフと外部との連絡は当然絶たれ、彼はいつ抹殺されるか、それとも永久監禁されるのかと危ぶまれました。しかし、モスクワにおいてエリツィンが抵抗し、市民や軍部がクーデターの首謀者に反対したため、ゴルバチョフは彼らによる救出を待つばかりということになりました。

 8月19日から首謀者たちが逮捕された22日までの間、クーデターは一時的に勝利したかに見えましたが、結果的には挫折しました。しかし、これにより最終的にゴルバチョフの権威は失墜し、ソ連邦は解体への道を進んだのでした。


●お粗末な武装蜂起が政権強化に与えた拠り所


 この時はロシアの軍隊が理性的に振る舞ったと同時に、ロシア市民が決起に反対しました。しかし、今回のトルコの場合、最低でもロシアにあったような計画性はなく、クーデターを引き起こした首脳たちも社会的・政治的に高い認知度を誇っていたわけではありませんでした。そういう意味で、今回の「トルコの最も長い夜」に起きたクーデター未遂事件は、ソ連の1991年の状況と比べても、誠にお粗末極まりないものだったのです。

 しかし、こうした事件を見て、エルドアン氏はどういう反応をするのか、今後注...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉

人気の講義ランキングTOP10
独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素
未来を洞察するために「独裁・共和政・民主政」の循環を学べ
本村凌二
「進化」への誤解…本当は何か?(7)進歩思想としての進化論と社会進化論
適者生存ではない…進化論とスペンサーの社会進化論は別物
長谷川眞理子
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(8)秀長の死の影響と秀吉政権の瓦解
「家康対奉行」の構図は真っ赤な嘘!? 秀吉政権瓦解の真相
黒田基樹
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIは間違いが分からない…思考で大事なのは訂正可能性
中島隆博
健診結果から考える健康管理・新5カ条(4)血圧を甘く見てはいけない
血圧を甘く見てはいけない…血圧が血管を傷つける仕組み
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歌舞伎はスゴイ(1)市川團十郎の何がスゴイか(前編)
市川團十郎の歴史…圧倒的才能の初代から六代目までの奮闘
堀口茉純
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純