トルコの一番長い夜とクーデター
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「最悪の文民政府でも最高の軍事政権よりはるかにましだ」
トルコの一番長い夜とクーデター(2)最悪の文民政府
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
政治学には「最悪の文民政府でも最高の軍事政権よりはるかにましだ」という金言がある。武装蜂起が挫折した後のエルドアン政権は、この金言を盾にこれまで以上の強権性を示していく可能性があると、歴史学者・山内昌之氏は言う。(全3話中第2話)
時間:10分56秒
収録日:2016年7月20日
追加日:2016年8月14日
カテゴリー:
≪全文≫

●トルコ軍蜂起と似ていたソ連8月クーデター


 皆さん、こんにちは。今回トルコで起こった軍による武装蜂起の失敗について、引き続きお話ししてみたいと思います。

 この武装蜂起を見て私がすぐに思い出したのは、現代史においていえば1991年のソ連におけるクーデターでした。

 当時はペレストロイカが行き詰まり、ロシア共産党が権威を失墜する中でした。再び改革を進めようとする党書記長だったミハイル・ゴルバチョフ大統領は、当時のロシア連邦ボリス・エリツィン大統領とカザフスタン共和国ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領の二人と協議して改革を進めようとしていました。

 新連邦条約が調印されるはずだったのは1991年8月20日でしたが、その直前にゴルバチョフは、静養中だったクリミア半島において自分の子飼いの部下たちから幽閉され、政治の表舞台から一時去ったかに見える事件が起こりました。当時のKGB(国家保安委員会)ウラジーミル・クリュチコフ議長、ゲンナジー・ヤナーエフ副大統領、そしてヴァレンチン・パヴロフ首相らが「国家非常事態委員会」と名乗り、クーデターを起こしたわけです。

 軟禁されたゴルバチョフと外部との連絡は当然絶たれ、彼はいつ抹殺されるか、それとも永久監禁されるのかと危ぶまれました。しかし、モスクワにおいてエリツィンが抵抗し、市民や軍部がクーデターの首謀者に反対したため、ゴルバチョフは彼らによる救出を待つばかりということになりました。

 8月19日から首謀者たちが逮捕された22日までの間、クーデターは一時的に勝利したかに見えましたが、結果的には挫折しました。しかし、これにより最終的にゴルバチョフの権威は失墜し、ソ連邦は解体への道を進んだのでした。


●お粗末な武装蜂起が政権強化に与えた拠り所


 この時はロシアの軍隊が理性的に振る舞ったと同時に、ロシア市民が決起に反対しました。しかし、今回のトルコの場合、最低でもロシアにあったような計画性はなく、クーデターを引き起こした首脳たちも社会的・政治的に高い認知度を誇っていたわけではありませんでした。そういう意味で、今回の「トルコの最も長い夜」に起きたクーデター未遂事件は、ソ連の1991年の状況と比べても、誠にお粗末極まりないものだったのです。

 しかし、こうした事件を見て、エルドアン氏はどういう反応をするのか、今後注...

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