トルコの一番長い夜とクーデター
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トルコ国防軍クーデター失敗がもたらした国民の分裂
トルコの一番長い夜とクーデター(1)武装蜂起失敗の背景
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
今年7月のトルコ国防軍によるクーデターは失敗に終わったが、多くの市民を犠牲にした今回の武装蜂起は過去3回の軍事クーデターとは大きく異なり、結果としてトルコ国民の分裂という事態をもたらした、と歴史学者・山内昌之氏は語る。それはどういうことなのか。その分裂に至る政治的背景について解説する。(全3話中第1話)
時間:10分57秒
収録日:2016年7月20日
追加日:2016年8月11日
カテゴリー:
≪全文≫

●国民の分裂をもたらしたトルコ国防軍クーデターの失敗


 皆さん、こんにちは。7月15日から16日にかけての一夜は、トルコの歴史にとって最も長い夜になったといわれています。この15日から16日にかけて生じたトルコ国防軍の一部による武装決起、武装蜂起は、一般市民と警察官に多数の犠牲者を出すことによって、最終的には鎮圧されました。しかしながら、これは国防軍の長い伝統において、回復不能ともいえるような汚点を残しただけではありません。トルコの対外的な信用と国民の統合に亀裂を入れたというだけでもありません。最も重要なのは、トルコの国民が二つに分裂したということです。「トルコの国内戦争が始まった」と言う人さえいます。

 つまり、あの街に出てクーデター反対を叫んだ市民、あるいは民主主義の担い手として内外で賛美されたあの市民とはどういう人たちだったかというと、これはまごうかたなく公正発展党(AKP)という与党政権とレジェップ・タイップ・エルドアン大統領の支持者たちでした。

 ところが、トルコにはそれと同じくらいの人数、すなわち国民の半分くらいは公正発展党とエルドアン政権の強権的手法や、あるいはこの間の独裁政治や腐敗した利権絡みの内政に対して批判的な人たちもいたことも考えなければなりません。


●「中東で最も安全な国」から「不安定国家」への陥落


 もっとも、こうした点については、外国人にとっても憂慮すべきことが多々あります。まずトルコは、日本人にとって非常に人気のある国であるということです。そして、イスタンブールを中心とし、カッパドキア、ギョレメ、あるいは地中海沿岸の古代のギリシャの遺跡、例えばトロイ、ベルガマ(ペルガモン)、また、現代のトルコ3番目の都市であるイズミル(古代ギリシャのスミルナ)など、こうした町々は観光名所としてトルコに大きな外貨収入を稼がせてきた場所です。この「テンミニッツTV」の主催者である神藏孝之氏と私もまた、数年ほど前にトルコを旅行し、アンカラそしてイスタンブールと回ったことを懐かしく思い出します。 考えてみますと、こうした二人の旅行は、トルコの一番平和で一番繁栄し、そして人々が一番輝いていた、そうした時代に行ったということで、そこは日本人にとってまさに観光のスポットとして行く価値のある場所であったと、つくづく思わざるを得ません。

 それにしても、中東で一...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
墨子に学ぶ「防衛」の神髄(1)非攻と兼愛
『墨子』に記された「優れた国家防衛のためのヒント」
田口佳史
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(7)不動産暴落と企業倒産の内実
不動産暴落、大企業倒産危機…中国経済の苦境の実態とは?
垂秀夫
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
人生100年時代の「ライフシフト概論」(3)キャリアの危機〈下〉
40代前半に訪れる「中年の危機」、鍵は「人生の成長戦略」
徳岡晃一郎