●悪条件の中、ついに熱水活動を発見!
次にドードー溶岩大平原に行きました。ドードー溶岩大平原には、深さ2,700メートルから2,900メートルほどの長くて狭い溝があります。その中を調べて、ここに熱水活動があるのではないかと予測を立てます。しかしここは長いので、潜航地点から下りていって、溝を北上して、また南下して、一往復で1日が終わってしまうような航海です。これを2006年12月19日に実施しました。この時は天候がだんだん悪くなってきて、もう最後の潜航と言われ、船長にも「先生もうやめましょう」と言われている時なのですが、しかしながらこれをやり遂げました。
こうした計画で、実際には図のように動いたわけですが、サイドスキャンで調べて、どのようなことが分かったかというと、海底がほとんど真っ平らでした。図はサイドスキャンのイメージですが、つるっとしたまるで滑走路のような状態です。もちろん、横のスケールが2キロメートルですから、細かいでこぼこまでは分かりませんが、こういう平らなところに何本も割れ目が走っていたりするのが分かりました。
これが三次元の映像です。ロボットが取ってきたサイドスキャンのところです。こういうところは真っ平らな溶岩です。ずっと溶岩がたまっています。そこに割れている箇所があって、実はここに熱水地帯があることをわれわれは発見しました。その時はロボットはただ走り回ってプルームが出ているということを確認するだけなのですが、先ほども言いました通り、その後のしんかい6500の調査で、その熱水が吹いている現場をきちんと捉えているわけです。ですからわれわれはインド洋で3番目の熱水活動をここに発見したと言っていいだろうと結論付けています。
●とても詳しい海底地形図も手に入った
ドードー溶岩大平原の広さはどの程度かというと、東京でいうと、図に示したような広さになります。羽田空港から練馬辺りまで、ずっと溶岩が広がっているような感じです。ボリュームでいうと、約16立方キロメートルあるのではないでしょうか。こういったことをわれわれは明らかにしました。
拡大するとこのようになり、見て分かるように非常につるっとしています。また、壁のようなものがずっと続いて立っています。非常に複雑な面白い地形です。これはロボットが出掛けて行ったからこそ発見できているわけです。これが拡大したところで、ここに壁が立っています。なぜ壁が立っているのか、非常に複雑です。また、へこんで溝ができている部分もあります。ここが拡大したことによって溶岩が出て、出た溶岩が固まって亀裂ができたわけです。南の方はこんな感じです。
細かい地形図も調べました。左がロボットが調べたものです。右は船の上から調べたものです。両者を重ね合わせると、どれだけ細かく分かったか。ここに少しでこぼこした箇所があるのですが、この辺りに熱水地帯があることを発見しました。
この図を見てください。これが船の上から撮ったものです。次に、これがロボットが撮った地形図です。より細かい地形がよく分かります。
●自律型海中ロボットの有用性を証明する画期的な出来事だった
そこを通過する時に、濁度の異常を発見します。それがこのデータですが、上はマンガンの異常、下は濁度の異常です。マンガンと濁度がシンクロして同じように変化し、あるところで急激に高くなっています。マンガン濃度が高く、濁ってもいる。つまりどういうことかと言うと、ここに熱水活動があるということをわれわれは発見したのです。3,000メートルの深さです。これがインド洋で第3番目の熱水地帯です。その後、これは「ドードー熱水地帯」という名前を付けられるのですが、そういう仕事をロボットが、r2D4がやってきたわけです。また、他の箇所にもいろいろな名前を付けるのですが、それは省略して、このようにr2D4ロボットがインド洋に出掛けていって、非常に大きな成果を上げました。
これはどういうことかというと、ロボットを使った観測がいかに役に立つものかが示されたと考えています。今から10年も前ですが、これが海底鉱物資源の調査に非常に有効だし、さらにはAUVを利用した効率的な海の調査をしていかなければならないということをつくづく感じたわけです。それから10年たって、前回説明したSIPのプログラムが始まったりするのですが、それ以前から十分な準備ができていると考えています。
これはその時の記念写真です。真ん中に私が座っていますが、向かって左の彼が船長で、とても苦労したと後で言っています。首席は写真左端の玉木賢策(たまき・けんさく)先生です。玉木賢策先生は、この5年後、2011年に国連の大陸棚限界委員会の会議の最中に倒れてお亡くなりになっています。われわれにとっ...