中東協力現地会議
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ローザンヌ条約以来、因縁のモスル帰属がクルド問題の争点
中東協力現地会議(2)クルドの民族問題と独立への可能性
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏による中東協力現地会議基調講演の解説第2弾。今回取り上げるのは、「クルドの民族問題と独立国家化への可能性」についてだ。イラク、シリア、トルコで一大勢力を持つクルド人組織だが、山内氏はそれらが手を結んで「大クルディスタン」を形成する可能性は極めて低いと言う。中東地政学からその背景を見ていくと、その理由が浮かび上がってくる。(シリーズ第2話目)
時間:9分20秒
収録日:2016年9月28日
追加日:2016年10月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●クルディスタン勢力が手を結んでも独立国家は難しい


 皆さん、こんにちは。今日は前回に引き続き、シリア問題に大きく絡んでいるクルド人の問題について、まずお話ししたいと思います。

 クルドの問題を考えるとき、自治から独立へ、あるいは自治から独立は可能なのか、という問い掛けがあります。一番問題なのは、今、現実にイラクの北部にクルド地域政府KRGの自治国家が、事実上、独立に近い形で存在しているということです。前回お話ししたシリア北東部のロジャヴァと呼ばれる地方のYPG(クルド武装部隊、クルド人民防衛隊)が、北イラクのKRGと結び付いたり、また、トルコの東南部アナトリアのPKK(クルディスタン労働者党)と呼ばれる米欧やトルコがテロリストとみなしている団体、非常に大きな影響力を持っているこのPKKの兄弟団体、別動隊がシリアのYPGだというのが、トルコ政府や国民の解釈です。

 したがって、シリア北東部のYPGと北イラクにあるクルド自治政府、そしてトルコの東南部におけるクルディスタン労働者党といった勢力を合わせた共和国、言ってしまいますと、「クルディスタン独立共和国」、「独立国家クルディスタン」というものが可能なのかどうかという問い掛けですが、これについて私は非常に悲観的です。そういう大クルディスタンはできないであろうと見ているのです。


●大クルディスタンが成立しない理由


 まず、その問題に関しては、関係するイラン、トルコ、イラク、シリアの中央政府(シリアについてはアサド政権ですが)の4カ国がこぞって反対するからです。すなわち、そこに大きなクルディスタンが出来上がることによって、国境が変容し、国家が分裂するということは、いずれの国も歓迎しません。したがって、そうした結果を招きかねないような事態に関しては、すこぶる懐疑的です。また諸外国も、そういう大きなクルディスタンができることによる中東の力学・地政学の根本的な変化、あるいは変化というより地政学革命が起こることについて、なかなか踏みきれないというのが実際のところです。

 クルドの中にも問題があります。クルド人は高い山と深い谷によって隔てられ、相互の行き来がなかなか難しい地域に、伝統的に隔離されて住んできたということもあります。ですから、同じようにクルド人、クルド語と言っても、彼らはこの4カ国にまたがって全てアイデンティティを共有す...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
昭和の名将・樋口季一郎…キスカ・占守島編(2)司令官の決断と苦悩
玉砕したアッツ島の絵を毎朝拝んでいた樋口季一郎…司令官の苦しみ
門田隆将
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国大名と民衆の過酷な課題…飢饉の常態化をどう生き延びるか
黒田基樹
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
イラン戦争と終末論(1)イラン戦争の戦略的背景と米国の政策
なぜイラン戦争がこのタイミングなのか?戦略的背景に迫る
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
織田家中一の武略者…『豊臣兄弟!』秀吉と秀長の知られざる実像
黒田基樹
Microsoft Copilot~AIで仕事はどう変わるか(1)「生成AI」の画期性
「生成AI」実装の衝撃…人工知能の歴史と特長
渡辺宣彦
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
インフレの行方…歴史から将来を予測する(3)戦後の日本経済と海外のインフレ率
オイルショック、バブル…過去と現在の環境の共通点は?
養田功一郎
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(2)戦略リーダーシップの8次元分析
総合評価は?トランプ大統領の戦略リーダーシップ徹底分析
東秀敏