中東協力現地会議
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クーデター失敗後、トルコは対外方針を逆転させたのか
中東協力現地会議(3)トルコの民主主義と外交
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
シリア問題が緊迫度を増す中、注目されるのはイランの過剰関与だけではない。7月のクーデター失敗以来、対外方針を逆転させたかのようなトルコにも注目が集まっている。IS撲滅に向けて、トルコは宿敵アサド政権とさえ手を結ぶのだろうか? 歴史学者・山内昌之氏による中東協力現地会議基調講演に、その答えを模索しよう。(シリーズ第3話目)
時間:8分44秒
収録日:2016年9月28日
追加日:2016年11月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●クーデターの失敗が生んだ「トルコ民主主義の成長」


 皆さん、こんにちは。シリア情勢はますます緊迫度を増し、かつ混迷は深まる一方です。その中でトルコが地上軍兵力をシリア北部に越境させたことは、前々回にも申した通りです。トルコでは今年(2016年)7月15日にクーデターが失敗に終わりましたが、この失敗こそが大変多くのところに波及を招いているのです。

 何よりもまず、トルコの国防軍が金科玉条のごとく掲げてきた「世俗主義」が民主主義とは違うことが明るみに出ました。選挙で選ばれた大統領とAKP(レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と公正発展党)が「イスラム的である」というだけで、選挙結果という民主主義の根本的な基準を無視することは、許されるものではありません。実際に国防軍はこの問題をめぐって分裂し、シビリアン・コントロール(文民の優位)が証明されたのは、トルコの民主主義の成長として評価に値するものと思われます。

 もし内戦が生じて、ここで国防軍の部隊同士が戦えば、昔風の言い方では「国軍相殺」(戦前の日本には「皇軍相殺」という言葉がありました)とでも申しましょうか。まさにトルコの軍の相殺に至った危険性があります。それのみならず、その結果トルコの国内は混乱を増し、場合や地域によっては近隣の国々やヨーロッパに難民が出た可能性さえあるわけです。そうした点で、この問題が調整されたのは、大変良かったのではないかと思います。


●ロシア・トルコ関係修復とレッドラインの相互尊重


 2015年11月、トルコとシリアの国境沿いで作戦中であったロシア空軍機がトルコに撃墜される事件があって以来、ロシアとトルコの関係は悪化し、緊張状態に入っていました。ところがクーデター未遂事件の直後にエルドアン大統領とウラジーミル・プーチン大統領はサンクトペテルブルクにおいて会談し、冷却したままの緊張状態を続けてきたロシア・トルコ関係を修復することに同意を見ました。

 これは、それぞれに国として重要なレッドライン(譲ることのできない一線)を持っており、そのレッドラインを互いに認め合うということについて、何らかの黙契が成り立ったという見方も出ています。それは、ロシアにとってはウクライナ問題であり、トルコにとってはクルド問題です。つまり、トルコはウクライナ問題に関してロシアの利益を尊重し、ロシアはトルコのクル...

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