中東協力現地会議
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
クーデター失敗後、トルコは対外方針を逆転させたのか
中東協力現地会議(3)トルコの民主主義と外交
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
シリア問題が緊迫度を増す中、注目されるのはイランの過剰関与だけではない。7月のクーデター失敗以来、対外方針を逆転させたかのようなトルコにも注目が集まっている。IS撲滅に向けて、トルコは宿敵アサド政権とさえ手を結ぶのだろうか? 歴史学者・山内昌之氏による中東協力現地会議基調講演に、その答えを模索しよう。(シリーズ第3話目)
時間:8分44秒
収録日:2016年9月28日
追加日:2016年11月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●クーデターの失敗が生んだ「トルコ民主主義の成長」


 皆さん、こんにちは。シリア情勢はますます緊迫度を増し、かつ混迷は深まる一方です。その中でトルコが地上軍兵力をシリア北部に越境させたことは、前々回にも申した通りです。トルコでは今年(2016年)7月15日にクーデターが失敗に終わりましたが、この失敗こそが大変多くのところに波及を招いているのです。

 何よりもまず、トルコの国防軍が金科玉条のごとく掲げてきた「世俗主義」が民主主義とは違うことが明るみに出ました。選挙で選ばれた大統領とAKP(レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と公正発展党)が「イスラム的である」というだけで、選挙結果という民主主義の根本的な基準を無視することは、許されるものではありません。実際に国防軍はこの問題をめぐって分裂し、シビリアン・コントロール(文民の優位)が証明されたのは、トルコの民主主義の成長として評価に値するものと思われます。

 もし内戦が生じて、ここで国防軍の部隊同士が戦えば、昔風の言い方では「国軍相殺」(戦前の日本には「皇軍相殺」という言葉がありました)とでも申しましょうか。まさにトルコの軍の相殺に至った危険性があります。それのみならず、その結果トルコの国内は混乱を増し、場合や地域によっては近隣の国々やヨーロッパに難民が出た可能性さえあるわけです。そうした点で、この問題が調整されたのは、大変良かったのではないかと思います。


●ロシア・トルコ関係修復とレッドラインの相互尊重


 2015年11月、トルコとシリアの国境沿いで作戦中であったロシア空軍機がトルコに撃墜される事件があって以来、ロシアとトルコの関係は悪化し、緊張状態に入っていました。ところがクーデター未遂事件の直後にエルドアン大統領とウラジーミル・プーチン大統領はサンクトペテルブルクにおいて会談し、冷却したままの緊張状態を続けてきたロシア・トルコ関係を修復することに同意を見ました。

 これは、それぞれに国として重要なレッドライン(譲ることのできない一線)を持っており、そのレッドラインを互いに認め合うということについて、何らかの黙契が成り立ったという見方も出ています。それは、ロシアにとってはウクライナ問題であり、トルコにとってはクルド問題です。つまり、トルコはウクライナ問題に関してロシアの利益を尊重し、ロシアはトルコのクル...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史