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戦後70周年、中ロ共催の記念式典の動きも

「2015年問題」を考える

石川好
作家
情報・テキスト
2015年は戦後70周年にあたる節目の年。中国とロシアはこの年に合同イベントを行うとの情報がある。このことが、隣国である韓国、北朝鮮、そして日本にどんな影響を与えるのか。この「2015年問題」について石川好氏が解説する。
時間:08:35
収録日:2013/10/31
追加日:2014/05/01
≪全文≫

●戦後体制確立後 70周年の「2015年問題」が中国で話題に


普段、現代史を研究したり、あるいは現代史に関心がある方々にとってみれば、時々ある区切られた年数や、確定的な年号を使う場合があります。
例えば、「2000年問題」という言葉がありました。これは、西暦2000年になったとき、世界中のコンピュータが誤作動を起こすのではないかということで、「2000年問題」という言われ方をしました。あるいは、「なんとか年問題」と、言葉で表現されることもありますが、人間の歴史というものは、やはり年号というものに拘束されているところがあると思います。そこで、年号ある言葉が出てくると、それに向けて何かものが動き出すということがあるわけです。
そして、今、年号の付いた言葉で注目すべきは、中国で語られている「2015年問題」です。
2015年とはどういう年号かと言いますと、1945年8月15日に第二次世界大戦が終わってから70周年という年です。中国は、第二次大戦後、国共内戦を経たあとに独立し、新しく中華人民共和国になりました。第二次大戦後にできた国連によって、いわゆる今の戦後体制というものが確立して70年経ったということを意味することにもなるわけです。


●ロシアと中国が2015年に共同でイベントを行うとの情報


ところで、第二次大戦で最大の死者を出した国はどこかと言いますと、ロシアです。正確な数字は分かりませんが、ドイツと徹底的に戦ったわけですから、3千万から4千万の人が死んだと言われています。同じように、中国も日本との十五年戦争によって、これも正確な数字は分かりませんが、3千万ないし4千万の人が死んだと言われています。つまり、ロシアと中国というのは、死傷者の数においては圧倒的に多かったわけです。
そこで、ロシアと中国は、戦後70年となる2015年に、共同で第二次大戦後の秩序を再評価する大きなイベントをやろうということで、つい先だってプーチンさんと習近平さんの間で合意がなされたのです。


●「戦後レジームの脱却」という言葉と新談話の動きがセットで外に伝わる


これは、実は日本にとって由々しい問題なのです。
なぜかと言いますと、今の安倍政権ないし安倍晋三総理が、「戦後レジームの脱却」「戦後レジームを打破するのだ」という言い方をしているからです。これは翻訳されて外側に伝わりますが、一般の日本人からすれば、「戦後体制の打破」というのは、なにか戦後アメリカが作った憲法とか、戦後の自由とか、民主主義とか、日教組教育とか、そういうものを打破しようではないかということで、そんなに悪いイメージではないのですが、ひとたびこの「戦後体制の打破」という言葉が外国語に訳されると、「第二次大戦によってできた世界秩序に対して挑戦状をたたきつけている」というように捉えられるのです。このことを、どれだけ日本側が理解しているのか。
第二次大戦が終わることによって、ロシアは五大大国の一つとして堂々とデビューしたわけです。中国も、第二次大戦後、国共内戦を経て、中華人民共和国という新しい国ができました。つまり、第二次大戦の勝者によって戦後体制ができたということです。しかし、それに対して、敗者である日本が挑戦状をたたきつけている、という認識が中国やロシアにはあるわけです。
安倍政権は、2015年あたりに、新しい談話を発表するという言い方をしています。それは、村山談話や、近隣諸国条項、つまり日本は近隣諸国に迷惑をかけたので、教科書を作る際、歴史を記述する場合には、あの戦争に対してなんらかの、言及をしなければいけないという、いわゆる宮沢談話、それからご存知のように従軍慰安婦の問題に言及した河野談話、こういうものを一括して外において、新しい談話を発表するということです。
と言うことは、アジア諸国にとって非常に重要な三つの談話を超えたものを作るということと、「戦後レジームの脱却」ということが、セットになって伝わるのです。
そういう中で、ロシアも中国も既に2015年にそれをやろうと進んでいるわけです。また、戦後70年である2015年という年号が分かりやすいのは、戦争の記憶がある人がまだぎりぎり生き残っている、おそらく最後の時期になろうかということです。


●注視すべきはロシア・中国・韓国の連合体への動きと北朝鮮の態度


そうしますと、当然韓国も、日本の植民地支配を脱却して独立したわけですから、今はそういう言い方をしていませんが、ロシアと中国が合同で大きな声明を出したり、第二次大戦の勝利の果実というものを大々的に唱えるのであれば、 朴槿恵政権も、間違いなくそこに参加していくと考えられます。なぜかと言いますと、植民地支配を脱出することができたのは第二次大戦の結果だからです。
そうなれば、日...
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