●1年目の反省を生かした合宿講義
「グローバル・ビジネス・ハイスクール(Global Business High School/GBHS)について話したいと思います。GBHSは、2014年、15年、16年と3回実施し、ある種の観察をすることができました。
最初のプログラムは皆さん、とてもいい話をしてくださったのですが、一つ課題が残りました。学生たちから見ると先生たちの話が一方的で、あまり議論できなかったという感想がいくつも出たのです。2日目に映画を見ました。『八甲田山』です。皆さん、『八甲田山』の話(原作『八甲田山死の彷徨』、新田次郎著)はご存知ですね。日露戦争の前に、陸軍が極寒の地でどこまでやれるかを、極寒の八甲田山で、青森連隊と弘前連隊に実験させました。青森連隊は少し強引なことをして、大きな連隊が最終的には全滅してしまいます。弘前連隊は高倉健が演じましたが、こちらは誰も死なないで帰ってきました。そういう話ですが、学生にはもうひとつ分かりにくかったようです。そんなことがあったので、2年目はあらかじめ学生にテーマを与えて発表してもらうことにしたのです。
いろいろな話をする中で、「日本を担うこれからの子どもたちをどう教育したらいいか」という話になりました。子どもたちが一体どういう情報を得て大人になっていくのかを考えたとき、それはまず学校の先生とクラスメートと部活からです。大学生になるとアルバイトをよくする学生も多いですから、それが例えばコンビニの店長などからになるのですが、それまでクラスの仲間たちは子どもですから情報が限られます。学校の先生は真面目な方も多く、視野は限られてきます。
一方、島田塾の参加者の皆さんは目がキラキラしていて世界で活躍している人がたくさんいますから、話をすると、「こういう場面を見せたい」ということになるわけです。ただ、それを自分の息子さんや娘さんにしても、親の話というのはなかなか聞いてくれません。そこで、「こういう場面でやったらどうか」と話をしたら、大いに盛り上がり、島田塾の有志の方に「参加してください」と声を掛けたところ、いろんな方が参加してくださり、非常にいい話をしていただきました。島田塾の人たちは、実業家や世界の投資家相手の話はお得意で朝飯前なのですが、中学生や高校生のつぶらな瞳を前にして話をするのは得手ではなかったようで、逆にそれが非常に真剣な話をしていただくことにつながりました。
子どもたちはそれを聴いて、話の内容を理解したかどうかはよく分からないけれども、何か感動したようです。夜の10時頃に散会となり、誰かの部屋に集まって話をした後、「翌日の朝7時に集まってテニスをやろう」と言って別れたら、翌朝、目をこすりながら出てくるのです。どうやら一睡もしていないのです。それで、翌日また話を聴いて感動して、夜また徹夜で話をして…ということで、非常に密接な友だちになったのです。
日本の学校で付き合う人は、学校に入るまでに大体似たような家庭、似たような学力、似たような資産、似たような目標を持った人たちが多いですから、極めて同質的な世界になります。そういう人たちでチームをつくって部活などをやっていますから、同質の上に同質化していきます。ところがGlobal High Schoolで集めた子どもたちは、何しろ年が12歳から18歳ぐらいまでと幅が広いし、男女が半々ぐらいだし、大阪や沖縄から来る学生もいて、それぞれの学校も、公立、私立、インターナショナルスクールと、さまざまです。ものすごく異質な集団だったことが新鮮だったのでしょう。今でもこの子たちはLINEで兄弟姉妹のように結び付いて、遊んだり、いろんな情報交換をしたりしているようです。そういった人がいたことが良かったのだと思います。
●自分で考えてプレゼンテーション
ということで、次の2年目のセッションは、課題を与えて報告をしてもらいました。報告をしてもらうと、これが結構いいのです。
第1日目は、小林りんさんです。小林りんさんはISAK(アイザック/International School at Karuizawa)という全寮制国際高等学校を日本で創った人で、なかなか呼べない人なのですが、来てくれたのです。どんな学校かというと、世界のいろんな国から、特に非常に生活水準の低い国からも学生を呼ぶ。もちろん奨学金が必要なので、皆さんの寄付で奨学金を集めています。例えば、今年は、ネパール人やインド人やカザフスタン人と日本人の生徒が混成チームをつくって、ネパール地震の復興支援活動をしていました。しかし、彼らの望みは大きく、学校をつくったり、場合によっては病院をつくろうといって、世界中に声を掛けてファンドを集めるといったことをやっています。
この学校では、そういうことを行って、何十というプロジェクトを走らせています。何をつくるのかというと...