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ナポレオンもワーテルローで敗れてから25年で合祀

靖国問題の歴史的経過を振り返る(1)1世代で戦争の記憶は消える

岡崎久彦
外交評論家
情報・テキスト
靖国、南京虐殺、従軍慰安婦、教科書問題、これらはなぜ今になって問題化してきたのか。そして問題化の端緒はすべて日本にあった。外交評論家 岡崎久彦が解説する。
時間:15:45
収録日:2014/01/16
追加日:2014/02/24
カテゴリー:
≪全文≫

●靖国問題はこのへんでやめた方がいい


―― 安倍晋三首相が12月26日に靖国に行かれましたけれども、ぜひ靖国問題について、お話をお聞かせください。

岡崎 靖国問題については先日、産経新聞に書きました。実は、参拝後すぐに原稿を書いたのですが、年末年始の新聞社は皆、休暇を取ろうとするから、先の日程を全部詰めてあり、いろいろな人にお願いして書かせているので、なかなか融通がきかないのです。それで、1月13日に掲載されました。

 私の言っていることは、要するに「もうこの問題はうんざりしたからやめようじゃないか」ということです。安倍さんがさっと行っていただいたので、むしろ1回ではなく、これから春秋の例祭に、必ず行っていただいたらどうかということです。

 それで、なぜ私が靖国問題はもうこのへんでやめた方がいいかと言うと、これには歴史的背景があるのです。それを少しご説明します。


●1世代で戦争の記憶が消えるいい例はナポレオン


岡崎 戦争の記憶というものは、普通は次の戦争でなくなってしまうのです。大体、次の戦争までの間に相手も入れ替わりますから。それは伝統的な話で、そうでなくても戦争が終わって1世代経つと記憶は消えるのです。

 1世代の一番いい例がナポレオンです。ナポレオンは大戦争をやりました。それで、戦犯になって、セントヘレナに流されます。そして、ワーテルローで負けるのが、1815年です。パリにアンヴァリッド(廃兵院)というものがあるのですが、要するに、ここは靖国神社です。戦没した兵隊を祀る、一種の記念の寺院です。そこにナポレオンが合祀されたのが、1840年です。だから25年なのです。まさに1世代です。

 世代というのは、親が子どもを作るまでが1世代ですから、1世代経ってナポレオンは名誉を回復したのです。ナポレオンの場合は、それから後にナポレオン3世も出てくるものですから、もう名誉回復どころではないのです。彼は、フランスの栄光を輝かせた英雄であり、それが彼の功績になるのです。これはナポレオン3世が出てきたからの話ですが、あれだけ悪口を言われた男が、名誉を回復するのが1世代なのです。

 その悪口は、非常にひどいものでしたが、事実もひどかったのです。ナポレオンはスペインを占領しましたが、それでスペインがゲリラ戦をやるのです。ゲリラを捕まえて、すごく残虐で、それがゴヤの絵にたくさんあります。僕が見た中で一番ひどいのは、捕虜を捕まえて、杭を尻の穴にぶち込むのです。それで死ぬので、その杭を地面に立てて見世物にしました。すごいです。それをもう事細かに描写してあります。ですから、あれは南京の虐殺博物館ですね。


●日本では70年代に一旦解決し、80年代に再燃


岡崎 戦争が終わって1世代といいますと、日本では1945年に戦争が終わっていますから、1970年です。70年までは60年安保で、日本は反体制運動が強かったのですが、70年安保では、安田講堂が落ちて、その年の暮れに自民党が300議席を取るのです。年が明けて、1970年を思い出すと、これは万博の年で、もうノンポリもいいところでした。日本中お祭りで、それでもう反体制も何もすっかり忘れていて、戦争の記憶は70年代に全て解決したのです。

 80年代に入り、この戦争問題が騒がしくなったので、80年代の終わりから90年代にかけて、アメリカや韓国の学者と集まって、しょっちゅうシンポジウムをやっていた時期がありました。それで、私は皆に「では、1980年という1年だけをとってみて、その中にあなた方のどなたか一人でも、“日本は戦後、戦争というものを清算していない、謝罪もしていない”と、そういうことを一言でも言っていた人がいたのか、証拠があったら見せてください」と言いました。証拠はないです。誰も反論できません。アメリカの学者、韓国の学者、中国の学者、ジャーナリスト、誰一人としてそんなことを言っていた人はいなかったのです。ハーバード大学のスーザン・ファー教授などは、「あれ、私はどうして言わなかったのでしょう」と言いました。全部80年代に始まった話なのです。

 しかも不思議なことは、全部が日本から出ています。向こうから出ていないです。まず82年の教科書問題です。これは、教科書に「北支侵略」と書いたら、文部省が介入して「進出」に変えたと、そういう情報を流したやつがいるのです。これがぐるぐるっと巡って、それで騒ぎになって、中国や韓国からも抗議が来るのです。

 ところが、それを早速調べたら、嘘なのです。もともと「進出」と書いてあり、「侵略」を「進出」に直したのではないのです。それはすぐに分かりました。すぐに分かったから、もうそれで「間違いでした」と言えばいいものを、時の宮澤喜一官房長官が、「今後は教科書をつくるときは、周辺諸国の感情を尊重する」などと言ってしまったので...
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