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「外国に干渉されることではない」と8月15日に参拝

靖国神社の参拝がなぜ問題になるのか(4)小泉首相の参拝と、解決への道

若宮啓文
元朝日新聞主筆
情報・テキスト
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/koizumiprofile/index.html)より
小泉首相の在任中6回の靖国参拝は東アジア外交に大きな困難をきたした。なぜ首相参拝が行われたのか、支持されたのか。その理由を紐解きながら、憂慮すべき点も例示し、A級戦犯合祀を含む靖国問題の解決点を示す。
時間:14:59
収録日:2014/01/17
追加日:2014/02/24
ジャンル:
≪全文≫

●遺族会票の獲得が総裁選公約の背景に


 靖国参拝の問題ですが、前回は中曽根康弘総理が1985年に公式参拝し、それに対して中国で大変な反発が起きて、それを受けて中曽根さんが翌年からの参拝を見送ったというお話をしました。

 その後の総理大臣は、例外は少しありましたが、それを受けて基本的には参拝しませんでした。特に8月15日は全くしなかったのですが、小泉純一郎総理が2001年に登場します。

 小泉さんが、総理在任中6回にわたり、毎年1回ずつ靖国神社を参拝しました。それにより、中国や韓国が大変反発し、東アジアの外交が大変混乱を来すということになったのです。そのことについて少しお話ししたいと思います。

 小泉さんはもともと、靖国神社にそれほど熱意のあった人ではありませんでした。2001年春、総理大臣になる前に自民党の総裁選があり、この時に「靖国神社に8月15日に毎年参拝する」ということを、総裁選の公約にしたのです。

 なぜそのようなことをしたのか。1つには、小泉さんは総裁選の少し前に、鹿児島の知覧にある特攻隊の基地を訪問しました。そこには特攻隊のいろいろな遺品などが展示され、遺書がたくさんあるのですが、そこで思いを非常に強くしたのです。「戦争、国のために自分の命を犠牲にしたこういう人たちの霊を、慰めなきゃいかんな」ということに目覚めたというのですが、それで靖国に行くと言い出したのです。

 もう1つの政治的な動機としては、総裁選は自民党の党員の選挙ですから、その中には特に遺族会の方が多く、遺族会の票をいただこうという作戦で、8月15日の靖国神社参拝を公約したと解説されています。私もそうなのだろうと思っています。


●退陣間際の2006年には8月15日に参拝


 そして、この年、「8月15日に行くぞ」ということになったものですから、実は中国などから事前に「それはとんでもない」「約束事に反する」というような反発が来ます。それで、この年はわずかに15日は避け、前倒しで13日にお参りしたのです。小泉さんは、それで中国はまあまあ納得するのかと思っていたらしいのですが、結果はあまり変わらず、中国ではやはり批判が強く巻き起こります。

 小泉さんはその後、中国を訪問し、「歴史認識で過去を正当化するつもりで参拝したのではない」という意味から、過去についての真摯な反省を述べたり、あるいは韓国にも行ってそういう発言をしたりして、少し修復させようとします。それで中国や韓国ももうこれで収まるのかなと思っていたようですが、小泉さんは翌年も、今度は春の例大祭の時に靖国神社を参拝し、中国や韓国は余計反発を強めてしまったという経緯があります。

 しかし、小泉さんは、「これは外国に干渉されることじゃないんだ」と言って、行く時期は秋に行ったり元旦に行ったりとくるくる変わりましたが、毎年参拝を続けます。そして、最後に自分がいよいよ退陣する間際の2006年には、8月15日に参拝しました。それについては国内で批判もありましたが、「小泉さん、よくやった」という声、応援団も日本の中では当然あったのです。


●参拝は問題ないという論理


 なぜ参拝するのかという理由ですが、これは中曽根さんもそうでしたが、第一に、英霊に対する約束だということです。亡くなった特攻隊の人だけではなく、戦死した人は多いですが、「靖国で会おう」というようなことを胸に抱いて亡くなったのですから、そこに国家の代表として参拝するのは礼儀であり、当然の義務ではないかというのが1つです。

 それから、A級戦犯の合祀が中国などの反発の理由ですが、それについては「日本の宗教観として、いくら罪人でも、死んでしまえばそういう人の霊を弔うのも日本の宗教の慣例である。あるいは、“罪を憎んで人を憎まず"という考え方もあるではないか」というようなことを、小泉さんは言っていたのです。

 靖国神社の強い信奉者の中には、戦争指導者として裁かれて亡くなった人たちも犠牲者で、あの戦争はアジア解放のために戦ったのであり、白人あるいはアメリカの陰謀でやられた戦争なのだ、というような考え方の人もいますので、A級戦犯が祀られている所に行くことに抵抗はないという人もいるのです。

 それから、どこの国でも戦争で亡くなった人を祀っている施設があり、そこに総理大臣や大統領など国家元首がお参りするのは、どこの国でもやっているではないかという理屈もあります。

 また、この問題は国内の問題であって、外国からとやかく言われることではないと、小泉さん、安倍さんなどはそのことを強く言っていますが、外国から干渉される理由はないというのが、参拝を支持する方々の論理です。


●国家が管理する常設の追悼施設をつくるべき


 一方で、やはりこれは大変な問題だと考える人も多いです。これは、中国や韓国...
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