●オバマ大統領、「アメリカ」として日米同盟強化を明言
オバマ大統領の訪日は昨年以来の懸案だったのですが、結論から言って成功だと思います。成功とする見どころは三つあります。
日本に関しては、日本の安全保障の姿勢をアメリカが完全にバックアップする、これができればそれだけでも成功なのです。というのは、安倍内閣のこれからの1カ月、3カ月、半年の一番の問題は集団的自衛権ですが、これを「アメリカは内心ではそれを望んでいない」などと言う人がいて、それに加えて保守化傾向と捉えて「日本が保守化して軍国主義化するのをアメリカは内心、恐れている」と言う人もいます。
大体「アメリカがどう考えているか」ということを言う評論家がいたら、これは全部モグリで、本物ではないのです。例えば、「アメリカは自分の血を流しても台湾を守る気がない」と、そう言う人がいたら、その場合は、「そのアメリカって誰?」と聞けばいいのです。それはオバマ大統領を指しているのか、あるいはケリー国務長官なのか、ヒラリー・クリントンなのかと聞けばよいのです。これには返事ができないでしょう。
もし、オバマ政権第一期の時にホワイトハウス国家安全保障会議のアジア担当上級部長をやっていたジェフリー・ベイダー、この人は親中派ですが、彼がそう考えていると言えば、それは正解です。
ところが、それほどアメリカの内情を知っている人でも、ジェフリー・ベイダーの言うことがアメリカの全体を支配するなどとは、思っていないのです。アメリカは世論があって、言論界があってマスコミがあって、議会があって、ホワイトハウスがあってそれぞれ意見が違う。それぞれの意見が混ざり合って一つに意見が集約してきます。ですから、アメリカはそうする気はないだろうとか、アメリカは日本の再軍備を望んでいないだろうとか、「アメリカは」という主語を言う人がいたら、その人はその瞬間にモグリです。専門家ではない。しかし、今までそういう議論が多かった。「アメリカは内心では日本の防衛力増強、集団的自衛権含めて防衛体制の強化を望んでいないのではないか」という言説をなす人がいて、またそれを新聞が書くのです。
そうすると、それに対抗するためには、「アメリカは日米同盟の強化を欲している。そのためには集団的自衛権の行使は必要である」と、それをアメリカに言ってもらうことがかなり大きな意味があった。それが達成されました。
●日米同盟確立に影響を及ぼした安倍内閣人事と官僚の動き
それはある意味では簡単ではありませんでした。なぜなら、アメリカの政権の中にハト派というか、リベラル派がいて、それが割合に国務省の中枢にいるからです。これは若干心配しました。これに対抗するには外交しかないわけで、わが方の日本大使館が良く働いたと思います。アメリカ合衆国国務省といっても上には国務長官がいて次官がいて、アジア・太平洋局担当の次官補がいる。さらに、その下に日本部担当の副部長がいて、日本部長もいる、といろいろいるので、あらゆるところを説得して話を進めていくと、結局正論は通るものなのです。
安倍政権ができて以来、官僚の士気が上がっていますから、皆、一生懸命働いていると思います。しかも、働くのはお国のためですから働きがいがあります。鳩山・菅政権の時に働くと「余計なことをしている」とか、「役人が何をする」などと言われて、働いても意味がなかった。ですから働きがいがあって、その働きを認められるという点が安倍政権の非常にいいところです。そういうわけで、わが日本大使館も外務省も良く働きました。日米同盟を固めるという点については、何も文句を言わせないような形をつくってやりました。これは大成功です。
安倍内閣が第一次内閣と第二次内閣でどこが違ったかというと、役人の使い方です。一つは、第一次内閣ではいわゆるお仕着せの順当な人事でやっていた。その中で使える人間を使ってやっていた。ところが、今の日本でいわゆる順当な人事をすると、どうしても半分は戦後教育の影響を強く受けた人間が入ってきてしまう。これは仕方のないことです。教育制度がそうなっているのですから。そういう人間を淘汰するシステムが働いていないので、特に鳩山・菅時代は戦後教育派の人間の方がむしろ良かった。しかし、半分が戦後教育に染まっている人間だと動かないのです。
戦後教育を克服するには、一つは家庭教育が大事です。そういう教育を大事に考える家庭に育った人は多いですし、また自分で本を読んで克服した人もいる。そういう人を使わないと物事が動きません。これはかなり差し障りがある表現だけれども、ここではっきり申し上げましょう。
だから、安倍総理になって半年のうちに外務事務次官と防衛事務次官の両方を変えた。これは外務事務...