トランプ政権の行方と日米関係
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
なぜ民主党ヒラリーは共和党トランプに負けたのか?
トランプ政権の行方と日米関係(6)民主党リベラルの課題
ジェラルド・カーティス(政治学者/コロンビア大学名誉教授)
政治学者でコロンビア大学名誉教授のジェラルド・カーティス氏が、民主党の敗因を分析する。かつてのリベラルは労働者など、経済的弱者の声を拾っていたが、今のリベラルはアイデンティティーポリティクスを中心にしている。民主党には裕福なリムジンリベラルが増え、アメリカ社会には価値観の分断が広がってしまった。(2017年4月20日島田塾第145回勉強会ジェラルド・カーティス教授基調講演「トランプのアメリカと日米関係」 より全8話中第6話)
時間:11分54秒
収録日:2017年4月20日
追加日:2017年5月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●民主党にもクリントンにも、なぜ負けたのかという反省がない


 最後に、一番大事な話をします。なぜトランプ氏が選挙に勝ったのか。そして、なぜトランプ氏に民主党が負けたのか。最も意味のある問いです。先週、ヒラリー・クリントン氏が講演の中で、敗因を自己分析していました。第1に、ジェームズ・コミーFBI長官が、クリントン氏の私用メールの調査を再開すると発表したことが、マイナスに働いたことです。第2に、ロシアが民主党の本部のメールをハッキングしたことです。第3に、女性であるということがマイナスに働いたことです。この3つの理由で選挙に負けた、というのです。

 なぜ負けたのか、その反省は一切ありませんでした。彼女だけでなく、民主党自体にも反省がありません。確かに、女性であるということはハンディキャップになったと思います。しかし、考えてみてください。アメリカ社会で、女性に対する差別・偏見と、黒人に対する差別・偏見では、どちらが強いでしょうか。残念ながら、間違いなく黒人に対する差別・偏見の方が、白人女性に対する差別・偏見よりも圧倒的に強いわけです。

 ところが、にもかかわらず、バラク・オバマ氏は大統領選挙に勝ちました。つまり、オバマ氏には、黒人であるというハンディキャップを乗り越えるような、人に魅力を感じさせる何かがあったのです。ところが、今度の選挙の場合、クリントン氏は政策通で素晴らしいと思いますが、人間の心をつかむものがあるとは感じられませんでした。彼女は上から目線で人を見るという印象を、どうしてもアメリカ人に与えてしまいました。


●今のリベラルは、アイデンティティーポリティクスが中心


 さらに、最も基本的なことですが、民主党はリベラルの政党です。しかし、リベラルの意味が変わってきており、それはアメリカ社会の大きな変化を象徴しています。昔のリベラル、私が若い頃のリベラルは、労働者や生産階級といった、弱い立場にある人たちのことを考えて政策をつくっていました。これが、私が民主党をずっと支持してきた理由でした。共和党は富裕層を代表する政党であるのに対して、民主党は経済的なリベラルでした。

 ところが、今のリベラルの意味はかつてとは全く異なっています。今のリベラルは、英語でいうアイデンティティーポリティクスのリベラルです。例えば、LGBT、レズビアン、ゲイの平等、ジェンダーの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎