トランプ政権の行方と日米関係
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トランプ政権の重要人物と政策の一貫性のなさ
トランプ政権の行方と日米関係(2)戦略・一貫性なき政権
ジェラルド・カーティス(政治学者/コロンビア大学名誉教授)
政治学者でコロンビア大学名誉教授のジェラルド・カーティス氏が、トランプ政権の重要人物について解説する。政権には、ゲイリー・コーン氏など経済政策に関して理性的な人物がいる一方で、スティーブ・バノン氏のようなオルタナ右翼も存在している。政策のコアとなる原理がなく、外交戦略や経済戦略も存在しないのだ。(2017年4月20日島田塾第145回勉強会ジェラルド・カーティス教授基調講演「トランプのアメリカと日米関係」 より全8話中第2話)
時間:8分43秒
収録日:2017年4月20日
追加日:2017年5月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●トランプ政権はファミリービジネスである


 このように、トランプ政権はまだ落ち着いておらず、かなり混乱しています。ホワイトハウスの中にも派閥争い、個人的な闘いがあります。もちろん非常に常識的で、理性的な人たちもいます。

 例えば、国家経済会議委員長であるゲイリー・コーン氏は、ゴールドマン・サックスの社長を務めた人で、民主党員です。あるいは、トランプ氏の娘婿、つまりイヴァンカ氏の夫であるジャレッド・クシュナー氏は、父親も民主党員で、そういう意味ではリベラルの側の人です。彼はトランプ氏と同様に、父の跡を継ぎ、ニューヨークで不動産業をやっています。奇妙な話ですが、ますますクシュナー氏の力が増してきています。彼は外交のことも知らないし、政府で経済政策に関係したこともありません。しかし、彼が中心人物になりつつあるのです。

 トランプ氏はビジネスをしていた時に、取締役会(board of directors)を一度も設けたことがありません。ファミリービジネス(家族経営)でずっとやってきて、今の政権もその延長線上にあります。例えば、大統領執務室(oval office)のすぐそばにクシュナー氏のオフィスがあり、1階上にはイヴァンカ氏のオフィスがあります。2人とも給料はもらっていませんが、政権の正式メンバーになっているのです。


●「行政国家を崩壊させる」ことがバノン氏の目的だ


 経済問題についていえば、クシュナー氏、ゲイリー・コーン氏、あるいはコーン氏の下にはケネス・ジャスター氏といった、理性的な人がいます。ジャスター氏はブッシュ政権にも入っていましたが、アメリカの投資会社ウォーバーグ・ピンカスのエクイティ・パートナーとして働いており、コーン氏の下で国際経済を担当しています。

 こうした非常に常識的で、国際経済のことを分かっている人たちがいるかと思えば、スティーブ・バノン氏のようなオルタナ右翼(alt-right)もいます。オルタナ右翼というのは、オルタナティブライトのことで、今までとは違った新しい右翼だということです。バノン氏はその代表格なのですが、恐ろしいほど頭が良い。

 バノン氏はトランプ氏を利用して、アメリカで一種の革命を起こしたいと言っています。「行政国家を崩壊させる(“deconstruct the administrative state”)」というのです。国家を造り上げるのではなく、造り上げられて大きくなりすぎた国家...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保