トランプ政権の行方と日米関係
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
強気の態度を取るトランプ政権の北朝鮮政策
トランプ政権の行方と日米関係(5)北朝鮮問題と米中関係
ジェラルド・カーティス(政治学者/コロンビア大学名誉教授)
政治学者でコロンビア大学名誉教授のジェラルド・カーティス氏が、トランプ政権の北朝鮮政策について解説する。トランプ大統領は北朝鮮に対して強硬な態度に出ているが、中国との協力なしには経済制裁は成功しないだろう。軍事オプションはありえず、北朝鮮に対しては制裁の出口として六者会合の再開を提案する必要がある。(2017年4月20日島田塾第145回勉強会ジェラルド・カーティス教授基調講演「トランプのアメリカと日米関係」 より全8話中第5話)
時間:12分22秒
収録日:2017年4月20日
追加日:2017年5月16日
≪全文≫

●経済制裁だけで北朝鮮が折れることはあり得ない


 日本人が心配すべきことは、日米の2カ国間のことではありません。日米の経済関係は当面大丈夫でしょう。問題はむしろ、周りの国々との関係、アジアに対するトランプ政権の政策です。

 例えば、北朝鮮がミサイルを発射しようとしたとき、アメリカがその発射台を攻撃して、ミサイルが発射できないようにするとします。これは朝鮮戦争になってしまうでしょう。北朝鮮は、間違いなく、韓国と日本に対して反撃します。アメリカまでは反撃できませんが、日本や韓国にあるアメリカの基地に対して攻撃できます。トランプ氏が言うように、「あらゆる選択肢があり得る(“all our options are on the table”)」という態度は構わないでしょう。プレッシャーをかけることは大事です。しかし、経済制裁だけしていれば、いつか北朝鮮が折れるだろう、ということもあり得ません。


●アメリカの経済制裁の結果、日本は真珠湾攻撃を決定した


 ここで、歴史を振り返る必要があります。1941年7月、アメリカは日本の在米資産を凍結しました。それ以前に、すでにアメリカは日本に対するガソリンの輸出を制限していました。その年の8月、今度はハイオク、日本の飛行機が使う石油の輸出を禁止したのです。近衛文麿首相は、フランクリン・ルーズベルト大統領とハワイで会って、何とか戦争にならないように話し合いたい、とアメリカに申し入れました。しかし、コーデル・ハル国務長官は「そんなことをして、日本にだまされてはいけない」と猛反対したのです。

 さて、今の状況もこれによく似ています。アメリカが北朝鮮と交渉すれば、北朝鮮にだまされる、とよく言われます。北朝鮮は時間稼ぎをするだけで、その間にまた核兵器をつくるはずだ、だまされてはいけない、ということです。歴史の場合は、どうなったでしょうか。アメリカは、経済制裁を強化すれば、日本がまずは東南アジアから、そして中国からも手を引くことになるだろう、と考えていました。その結果、日本は1941年12月1日の御前会議で、真珠湾攻撃を決定することになってしまいました。


●アメリカが軍事力を使うのでは、と中国は初めて恐怖感を抱いた


 確かに、北朝鮮に対する経済制裁を強化することは大事でしょう。オバマ大統領の8年間のstrategic patience(戦略的忍耐)という政策は、私に言わせればstrategic(戦略...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政