●民主党はあくまでトランプに反対する
最後に、あと2~3つお話しします。よく聞かれるのは、ドナルド・トランプ大統領は、例えばオバマケアの改正で共和党の支持を得られないとすれば、今度は民主党と協調するのではないか、ということです。いわゆる超党派的(bipartisan)に民主党と組むのではないか。絶対にあり得ません。民主党はどんなことがあっても、トランプ氏を助けるようなことはしません。同じ政策を支持していても、トランプ氏がやるなら支持しません。要するに、トランプ氏にあくまでも反対する。昔の日本社会とそっくりです。反対をして、それで2年先の中間選挙で勝てると思っているのです。だから民主党はトランプ氏に協力しないでしょう。
しかし、選挙区のことを考えると民主党が勝つのは困難でしょう。日本の衆議院では最近区割りを変えましたが、区割りを直すということは、どの国でも難しい問題です。アメリカにはゲリマンダーがあります。昔の日本でいうハトマンダーです。よほどのことがない限り、現職議員が落選することはありません。民主党と共和党が一緒になって、どちらかの政党の支持者ばかりが圧倒的に多い選挙区がつくられています。こうした区割りでは、現職議員が当選します。
したがって2年先の下院選挙で、共和党が少し減ったとしても、よもや過半数を失うことはないでしょう。民主党はもっと反省をして、自分のルーツをもう一度考え、新しい世代のリーダーを探さなければ、将来は非常に暗いと思います。トランプの再選も十分あり得ると、私は思っています。
●トヨタはケンタッキー工場のリフォームに巨額の投資をする
インフラストラクチャーの問題についても、付け加えておきます。トランプ大統領は、インフラストラクチャーの整備に本気で取り組むつもりでしょう。ただ、予算は使わず、プライベートセクターからの資金を望んでいます。したがって、官民パートナーシップでインフラストラクチャーを整備するのですが、どこまでうまくいくか分かりません。
日本の企業は、今のところかなり上手に対応しています。例えば、トヨタは特にそうです。ケンタッキー工場のリフォームに約1,500億円(13.3億ドル)の投資をすると、先週発表がありました。昨日はマイク・ペンス副大統領に、インディアナ工場へ新たに6億ドルの投資を行うことを伝えています。他の日本企業も、例えばJR東海の葛西敬之名誉会長が、アメリカに新幹線の話を持って行ったりしています。
驚いたのは、安倍晋三首相がトランプ大統領に対して、日本企業がアメリカのインフラストラクチャー整備のために、1兆円を投資すると言ったことです。ただ、これは見通しであって、約束ではありません。日本は民主主義国であり、資本主義国です。投資を決めるのは安倍首相ではなく、日本の企業です。いくら安倍首相が言っても、企業は自分の利益にならなければ投資しません。
しかし、中国は違います。習近平国家主席がマール・ア・ラーゴに行った時、アメリカのインフラストラクチャーのリフォームに莫大な額の投資を約束すると、私は思っていました。しかし、習氏はこうした話をしませんでした。おそらく、後で交渉のために使おうと思っているのでしょう。
●トランプが最重要視しているのは、アメリカ人の雇用である
今後、トランプ政権はどうなるのでしょうか。正直にいうと、誰にも分かりません。トランプ氏自身も分かっていません。どちらの方向に向かうのか分かりませんが、今のところは運良く、多くの政策でより現実的な路線が取られています。しかし、何かのきっかけで、これはまた変わり得ます。
トランプ氏が最重要視しているのは、アメリカ人の雇用です。雇用が増えなければ、次の選挙で絶対落選します。しかし、トランプ氏が言うのとは違って、アメリカから中国やメキシコへ工場が移転したために、多くの人が職を失ったのではありません。テクノロジカルチェンジ(技術変化)によって、仕事を失っている人が圧倒的に多いのです。したがって、いくらアメリカで工場を造る、あるいは炭鉱に対する環境規制を緩めるといっても、コールマイナー(炭鉱夫)の雇用が増えることにはなりません。現在、コールマイニング(石炭採鉱)にもハイテクノロジーが導入されており、炭鉱夫の人手は不要になってしまいました。
●トランプ政権は、4年間は持つ!?
トランプ政権はいつまで持つでしょうか。4年間は持ちます。彼が途中で辞めるということは、あり得ません。弾劾されれば別ですが、弾劾される理由もなかなか出てこないでしょう。ウラジーミル・プーチン大統領とトランプ氏が大統領選挙のために陰謀を企てた、ということが本当であれば、すぐに弾劾されるでしょうが、そのようなことはないと思います。セックススキャンダルがあり...