●トランプ大統領自身が抱える政治的リスク
今日はトランプ大統領が抱えるリスクというお話をします。通常「トランプリスク」とは、市場が抱くトランプファクターによるリスクのことを言います。例えば、トランプ氏が何を言い出すか分からないことや、ツイッターで何をつぶやくかによって市場が乱高下するリスクのことを指しますが、今日はその話ではなく、トランプ氏自身が抱える政治的なリスクとはどのようなものがあるか。そういうお話をいたします。
全部をお話しするわけにはいかないので大きく三つを挙げます。一番目はアメリカの政治制度が持っているリスク、二番目は共和党あるいは議会運営のリスク、三番目が弾劾のリスクです。
●大統領制のリスク-チェックアンドバランスと政治的停滞
最初に制度としての大統領制のことをお話しします。アメリカの大統領は非常に権限が強いといわれていますが、その強い権限はある意味では、議院内閣制よりも脆弱なところがあります。
一つにはテンミニッツTVで何度もお話ししているように、三権分立、いわゆるチェックアンドバランスということで、大統領にはチェックが非常にきつい制度であることです。別の言い方をすれば、議会、上下両院からのチェック、司法からのチェック、さらに州からのチェックも加わるということで、チェック、チェック、チェックとなり、大統領が独自の政策をなかなか実行できないということです。
立法は大統領権限ではなく議会が行いますし、予算も議会がつくるということで、ある意味で通常の議院内閣制の国が持っている首相の権限というものが大統領にはないのです。そういう意味でいうと、政治的停滞は当然起こります。その政治的停滞は、そもそも制度に内在化している停滞なのです。
では、停滞がないようにしたらいいではないかと思うかもしれません。しかし、アメリカの憲法やアメリカの仕組みを設計した人たち、彼らをフェデラリスト(連邦派)と呼ぶわけですが、そのフェデラリストの中心的メンバーであるジェームズ・マディソンなどが考える政治は、「停滞する方が暴走するよりいいのだ」というものです。つまり、ある意味で停滞は当たり前ということを前提とした制度設計なのです。
●少数者が多数による支配、暴走を抑制するしくみになっている
アメリカ政治を考えるとき、これは私の分類ですが、二つの大...