日本の外交を理解するための三つの質問
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
同盟を結ぶ場合、絶えず二つのジレンマが存在する
日本の外交を理解するための三つの質問(2)日米同盟を維持するための課題は何か
ジェラルド・カーティス(政治学者/コロンビア大学名誉教授)
日本の外交を理解するための三つの質問うち、二つ目のテーマは「日米同盟」である。ジェラルド・カーティス氏が、日米関係の変化に触れながら、東アジアという環境の中で日米同盟を維持するための課題を提示していく。(全3話中第2話目)
時間:8分24秒
収録日:2014年4月18日
追加日:2014年5月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●同盟を組む場合には、絶えず二つのジレンマがある


では、日米同盟維持の問題ですが、今申し上げたように、中国が日本に対して挑発的な行為をするならば、アメリカは牽制をしたり、反対をしたりする。同時に、日本が中国や韓国に対して関係を悪くするような行動をするならば、アメリカは黙っていられないということです。これは、二つの国が同盟を結ぶ場合、絶えず二つのジレンマがあり得るということです。
一つ目のジレンマは、同盟によって、自分たちは関わりたくない問題に、同盟相手の国によって巻き込まれる恐れがある、ということです。例えば、アメリカがどこかで何かの紛争を起こした場合、それに日本が巻き込まれる恐れがある、ということです。だから、戦後、日本はそのことをずっと心配して、どうすれば巻き込まれないようになるかという問題を、「第9条を大事にしましょう」とか、いろいろな方法として考えたわけです。それが一つ目のジレンマです。
もう一つは、同盟があるにも関わらず、同盟相手が守ってくれないかもしれない、見捨てられるかもしれないというジレンマです。
この、巻き込まれるというジレンマと、見捨てられるというジレンマが、同盟国には絶えずあるわけです。


●冷戦時代から変化した日米の関係性


戦後、日本は、巻き込まれる恐れはあったけれども、見捨てられる恐れはなかったのです。当時は、冷戦の二極体制でしたから、例えば、ソ連が日本に対して北海道を攻撃しようとすれば、それは直接アメリカの脅威となるので、間違いなく日本を守ったわけです。
しかし、今は冷戦時代ではありません。何が変わったかと言えば、二つあります。
一つは、同盟相手の行動によって、自分たちは関わりたくない問題に巻き込まれるというのは、日本が心配しているだけではなく、アメリカも心配しているということです。
尖閣で日中の衝突があれば、われわれアメリカ人、アメリカ政府が巻き込まれるわけです。例えば、中国がある日突然、尖閣を占拠しようと思ったら、それは中国が明らかに悪いと分かるから、アメリカは日本を守ります。
しかし、もしも尖閣で何かあった場合、「最初に何かをして、発端を作ったのはどちら側なのか」ということがよく分からない可能性が大きいのです。そうしたら、誰一人として住んでいない、あの五つの島と三つの暗礁のある尖閣諸島のために本当に戦いますか、第7艦...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味
『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味
田口佳史
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
〈続〉認知バイアス~その仕組みと可能性(1)概念のバイアス〈前編〉
非合理なのに誰もがハマる「概念のバイアス」とは
鈴木宏昭
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤