中東・湾岸情勢
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大使召還事件はGCCに新たな枠組みをもたらす
中東・湾岸情勢(2)新しい戦略的互恵と提携の時代へ
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中東・湾岸の諸国間関係が大きく揺れている。長らく伏流していたズレが「アラブの春」を契機に表出しはじめ、米国の方針転換により噴出した。サウジアラビアを中心とした湾岸協力会議(GCC)は、アメリカ、ロシアを含む世界に対してどう働きかけ、どんな外交戦略を打ち出すのか。3月のカタール大使召還事件から湾岸情勢を読み解く。(後編)
時間:13分50秒
収録日:2014年4月23日
追加日:2014年5月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●サウジアラビアとUAEは反ムスリム同胞団で一致結束

 
 サウジアラビアと比較的近い関係にあるアラブ首長国連邦(UAE)についても、サウジアラビアとすこぶる似たところがあります。UAE自体が多くの君主国家、すなわちアブダビやドバイやラアス・アル=ハイマといった、王族、王室が支配している国々の連邦国家が、例えば自らの国の支配を脅かしかねない二つの大きなイスラム的脅威──一つは、申すまでもなくシーア派のイランという巨大な隣国です。もう一つは、同じスンナ派の中でありながら、イスラム主義によって王制国家を常に転覆しようとする政治宗教団体で、その一つがムスリム同胞団です──このムスリム同胞団に対するカタールの融和的な態度に対して、サウジアラビアとは常に一致結束して反対してきました。したがって、この2年間、UAEの国内においては、ムスリム同胞団に対する厳しい取り締まりが行われてきたのです。


●サウジアラビアとバーレーンの深い絆


 また、バーレーンという国がありますが、この国はサウジアラビアと非常に深い絆で結ばれています。バーレーン島から長い橋を通してサウジアラビアに入国するルートは、陸から入っていくルートとして非常に普遍的であり、日本のビジネスマンや外交官もよく使います。私も、最近では今年2014年の1月にバーレーン経由でサウジアラビアに行ってきました。

 バーレーンとサウジアラビアは深い安全保障の絆で結ばれていますし、王族間にも私的なつながりが強く見られます。したがって、バーレーンはサウジアラビアに近い存在であり、今回、UAE、サウジアラビアと並んでバーレーンも、今のアサド政権のシリア政府、あるいはムスリム同胞団に対して融和的なカタール政府に対して、あるレッドラインを超えたということで、大使召還という措置に入ったのです。


●エジプトをめぐるカタールの孤立、サウジアラビアのいら立ち


 カタールという国と他のGCC(湾岸協力会議)5カ国との大きな違いはいくつかありますが、エジプトをめぐっても違いがあります。

 エジプトにおいては、この間の軍部による事実上のクーデター、革命によって、一応は選挙で選ばれたムスリム同胞団系の大統領、モルシ氏が追放されるという事件が起きました。それに代わって、間もなく行われるエジプトの新しい選挙で、陸軍の最高指導者であるシシ将軍が、...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
中国の「なぜ」(1)なぜ「中国は一つの国なのか」
武力で負けても文化で勝つ? 恐るべし「中原」の同化力
石川好
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ