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キューバを訪れて見えてきたキューバの今と歴史

キューバから見る現代史(1)スペイン植民地とアメリカ

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、旅を通して見えてきたキューバの今と歴史を解説する。キューバの街並みには、スペインの植民地時代の建物が残り、古いアメ車が走っている。キューバの歴史は、植民地独立運動に始まる。米西戦争でアメリカと共に戦った独立運動の志士たちは、しかし戦後アメリカに弾圧された。(全3話中第1話)
時間:08:35
収録日:2017/04/26
追加日:2017/06/24
タグ:
≪全文≫

●2015年、アメリカはキューバと国交を回復した


 今日は、「キューバの今」というテーマでお話させていただきます。2015年7月、アメリカとキューバは国交を回復しました。翌年の3月には、バラク・オバマ大統領がハバナを訪ねて、フィデロ・カストロ氏の弟である、ラウル・カストロ国家評議会議長に会いました。それから程なくこれまで50年以上続けてきた経済制裁への解除が始まりました。これで名実ともに国交回復ということになったわけです。

 このニュースが世界中を駆け巡ったわけですが、日本人にとっては、キューバは地球上最後の楽園という印象ですね。地球上最後のフロンティアといわれたのはミャンマーですが、キューバに対しては、ある種のノスタルジアがあります。例えば、最高級葉巻はハバナの代名詞です。あるいは、海賊が飲んでいたというラム酒も、最高級のものはキューバ産です。歌と踊りも有名です。

 ある時、キューバでは博物館行きの車が1950年代の車で、それがまだ走っているということを聞き、私たちはキューバに行ってみたいと思いました。そこで私たちの仲間である若い経営者が集まり「是非いこう」ということになり、キューバへ旅行することになったのです。


●キューバに到着するなり、非常に幻滅してしまった


 キューバでの旅行をアレンジするのは、かなり大変でした。航空便もホテルもなかなか取れないのです。やはり国交回復の影響でしょうか、キューバに訪問客が殺到していたのです。何とか航空券とホテルを確保して、十数人で出掛けました。ビジネスクラスで、往復80万円ほどかかりました。

 空港へ降り立ってからもトラブルがありました。十数人の仲間の若い経営者の1人が、突然税関で止められてしまったのです。どうしてなのか分からないでいると、係官が「Wi-Fiを持っているだろう?」と聞いてきます。最近は、誰でもWi-Fiを持っています。キューバ人はWi-Fiを知らないのかと思って調べてみると、キューバにもあちこちにあります。しかし、なぜかこの係官は、私の仲間がWi-Fiを使ってスパイかなにかをしていたのではないか、と疑っているのです。私も付き添っていましたが、係官とのやり取りには1時間半もかかってしまいました。上司を呼ぶなどと言って、こちらの言うことを信用しません。

 夜中に到着したものですから、私は疲れ果ててしまって、「一体この国は何なんだ」と思いました。この係官は女性で、明らかに人柄が良さそうなのに、税関のシステムはなっていないと感じました。キューバに到着するなり、非常に幻滅してしまいました。この程度の国なのか、と思ったわけです。


●街には派手なペンキが塗られた50年前のアメ車が走る


 しかし、空港を出て、薄暗い道路をずっと走ってホテルへ着いてみると、これが非常に良いホテルでした。コヒバホテルというところで、世界標準のホテルです。のんびりとしていて雰囲気が良く、ホスピタリティーも良いのです。つまり、あまりぎちぎちとはしておらず、ちょうど「いい加減」なのです。

 ラム酒を注文して飲んでみると、今までに飲んだことのないようなおいしいラム酒でした。ラム酒は砂糖から作りますが、キューバは、世界で最も純度の高い砂糖の産地なのです。それで一気に気分が良くなりました。

 街の風景は、古いスペイン時代の建物が残っていますし、うわさのアメ車も走っています。しかも、ライトブルーやグリーン、金色といった、とんでもなく派手なペンキが塗られています。おそらく、もう50数年も前の車ですから、部品がないのでしょう。ソ連製のトラックの部品を使っているのではないか、などと聞いたりもしました。こうした車の多くはタクシーで、まだ現役で立派に走っています。

 街へ出て食事をしてみると、なかなかおいしいですし、何より楽しいのです。みんなにこにこしていて、すぐ歌が始まります。3人組、4人組のバンドが入ってきて、歌い出せば、みんな一緒に踊り出します。やっぱりキューバだ、と感じました。

 ハバナの街を歩き、革命博物館にも行きました。キューバのもう一つの売りはアーネスト・ヘミングウェーです。ヘミングウェーの『老人と海』はキューバの海岸で書かれました。夜のハバナが、またすごい。踊りも歌も朝まで続きます。


●サンタクララには、チェ・ゲバラの霊廟がある


 この旅は、非常に圧縮された旅でしたが、その限られた時間の中で、まずはサンタクララに遠出をすることにしました。ハバナから約300キロも離れていて、往復で1日かかってしまいますが、サンタクララには革命家チェ・ゲバラの霊廟があるのです。チェ・ゲバラの骨が、非常に大切に守られています。サンタクララへの旅は、私たちをキューバの歴史に引き戻してくれました。

 キューバを世界地図で見ると、アメリカ大陸のすぐそ...
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