ブラジルの繁栄と転落
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
カルドーゾ、ルーラ政権と続いたブラジルの繁栄
ブラジルの繁栄と転落(2)民政移管後の大復活と債権国への道
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
繁栄と転落の歴史をたどりながら、ブラジルの復元力に迫るシリーズ後編。驚異的な高度成長を遂げた軍政時代の後、転落と復活のなか、今日に至った経緯を追いながら、ブラジルが将来、世界の牽引役を担う可能性に追う。
時間:13分43秒
収録日:2014年4月10日
追加日:2014年6月12日
≪全文≫

●石油ショックを契機にブラジルのインフレは世界最悪に


 ところが、直後に転落が始まります。その理由は、1973年の石油ショックです。ブラジルは、当時まだ日本と同じように、石油の大半を海外に依存する国だったので、原油価格が4倍増、5倍増となり、打撃を受けます。

 その上、軍政時代の経済の後遺症もあるわけです。軍政時代にいろいろなことをやったので、財政赤字が積もっていました。そこに、インデクセーションという仕組みを取り入れたのです。インデクセーションというのは、普通のちょっとした変動ならいいのですが、インフレ期待が重なっているところでは、例えば、賃金も利子も物価も何もかも全部インデックスで調整してしまいますから、ビルト・イン・インフレ、すなわち、インフレ先取りのメカニズムになってしまうわけです。軍政は、そんなものを内蔵していたものですから、ブラジルのインフレは世界最悪になってしまったのです。

●民政移管後、ばらまき型の社会政策によって狂乱インフレとなる


 そこでとうとう軍政は、1985年に終わり、民政に移管されて、3人の大統領が次々と出てくるのです。軍政は、社会主義をかなり批判しておりましたので、社会主義者で優れた人たちはみんな苦汁をなめていたのですが、民政に移管されたことで、その人たちは喜んで出てきたわけです。それで、皆揃ったようにばらまき型の社会政策をし、これがまたインフレに輪をかけたのです。そのため、経済のコントロールが全くできなくなり、大統領の中の何人かは、任期を全うできなかったり、病気で辞めてしまったりと、散々でした。まさに、ブラジルの悪夢の時代です。

 このインフレは狂乱的で、1990年代前半にはなんと年率1000パーセントを軽く超えたそうです。1000パーセントのインフレというのは、月々100パーセントインフレが高進すると考えたらいいでしょう。午前と午後とで値段が相当違う、というような経済です。ですから、ブラジルの方々は、月給の人も、週給の人も、とにかく給料をもらうとすぐにスーパーマーケットへ行って食料に全部使ってしまうのです。少し待っているだけで、ものすごく高くなってしまうからです。

 この状況が、足掛け10年ぐらい続いたわけですから、よくそんな生活に耐えられたなと感じるのですが、それでもカーニバルは1年も休むことはありませんでした...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
日本の財政政策の効果を評価する(1)「高齢化」による効果の低下
高齢化で財政政策の有効性が低下…財政乗数に与える影響
宮本弘曉
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦