●あらゆる産業がアメリカの利益になるよう、政策誘導が行われた
アメリカは、米西戦争の後、フルヘンシオ・バティスタ将軍にクーデターを起こさせて、キューバ人の政権を倒します。1回目は失敗しますが、2回目には成功し、バティスタ将軍が大統領になりました。しかし、これは傀儡政権です。彼はアメリカに報いなければならず、キューバのあらゆる産業がアメリカの利益になるように、政策誘導が行われました。例えば、通信や砂糖はアメリカの会社に奪われてしまいました。
キューバの最大の産業は砂糖です。輸出品の8割を占めています。サトウキビの農地がずっと広がっているのですが、その大半をアメリカの企業が占有してしまったのです。労働者は、非常に低賃金で、朝から夜までの過酷な長時間労働に従事し、サトウキビを収穫しました。
ところが、サトウキビの収穫期は年に4カ月ほどしかありません。それ以外の時期、労働者は生きていくために、会社から前借りをしなければなりませんでした。それが膨大な借金になってしまい、アメリカの会社の奴隷になってしまうのです。農民の大半は、水道もトイレもない小屋で、動物のような暮らしを強いられました。こうした姿を想像すると、アメリカも相当なものだという感じを持ちます。
●カストロは農民の惨状に心を痛めた
こうした風景を、若きフィデル・カストロは見てきました。カストロの父はスペイン移民でしたが、非常に能力があり、たちまち地元の名士になった人です。カストロは、比較的豊かな生活ができたのですが、農民の惨状を見て非常に心を痛めます。
名門ハバナ大学の法学部に進み、弁護士になったカストロは、農民や弱者の面倒を見続けました。しかしそうしたことでは、彼らを救うことはできません。そこで、やはり自分が立ち上がって武器を取り、革命を起こすしかないと決心します。当時、モンカダとバヤモの2カ所に政府軍の兵舎がありました。仲間と相談し、これを襲おうとしますが、武器を乗せたトラックが政府軍に気付かれてしまいます。門に到達する前から銃を打ち出してしまい、すぐに見つかって、全員捕まえられてしまったのです。
ところが、カストロは運が良かった。警察署長のような人に連れて行かれ、軍に捕まった人のほとんどが殺される中、生き延びることができました。つてを頼りにメキシコに避難し、しばらくの間、充電することができたのです。
●カストロはゲバラとともに、ゲリラ戦を展開する
カストロがメキシコにいる時、青雲の志を抱いたアルゼンチン出身の青年、チェ・ゲバラに出会います。チェというのはニックネームで、(スペイン語で)「おい」という意味の言葉です。ゲバラはなにかと「チェ」と言うのが口癖で、とうとうそれが名前になってしまったのです。彼は子どもの頃からぜんそく持ちで、体はあまり強くありません。医学部に進み、一応医者の資格があります。カストロに会った時には、非常に意気軒高で、二人はすっかり意気投合しました。力を合わせて革命を起こそう、ということになったのです。
メキシコでは、軍事関係者から軍事訓練を受け、やがて80人ぐらいの仲間ができます。どこかで手に入れたグランマ号という大型ヨットに乗ってカリブ海を渡り、キューバに戻ることになりました。グランマ号というのは、たまたま中古の船を買ったところ、グランマという名前が付いていただけのことです。
海を渡る途中、嵐に遭って沈みそうになったり、みんな船酔いになってしまったりして、キューバに上陸した時にはもう疲れ果てていました。しかも、キューバでは政府軍が待ち受けており、銃でバンバンやられ、端から順に倒れていくような始末でした。数日後、ジャングルの中の示し合わせた所に集合した時には、十数人しか残っていなかったのです。
当然、もうこれで終わってしまうかと思われたのですが、やはりカストロも連戦の勇者です。ジャングルに身を隠して、ゲバラと一緒にゲリラ戦を展開します。すると、あちらこちらから農民が参加してきて、一緒に戦ってくれることになったのです。とうとう農民が数万人もこの戦いに加勢することになりました。地の利を知った農民とのゲリラ戦になれば、政府軍はなかなか勝てません。一進一退というよりも、ゲリラの方が優勢だったようです。
●ゲバラたちはたった十数人で、政府軍を撃退した
これをずっと見ていたバティスタ大統領は、革命軍を一気にせん滅しなければならないと決意します。田舎町のサンタクララにゲバラが潜んでいると情報を得て、ハバナから武器や弾薬、兵士を、装甲列車に乗せて派遣します。ところが、列車が到着するや、潜んで待ち構えていたゲバラたちが、列車を爆破して屋根に飛び乗り、結局、数百人の政府軍の兵士を捕虜にしてしまったのです。ゲバラたちは、...