キューバから見る現代史
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
キューバとアメリカの国交回復は見直されるのか?
キューバから見る現代史(3)キューバ危機から国交回復
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
公立大学法人首都大学東京理事長の島田晴雄氏が、アメリカとキューバの国交回復の経緯について解説する。キューバ危機以降、アメリカはキューバと国交を断絶し、経済制裁を加えてきた。近年、経済交流回復の声が高まり、オバマ大統領は2015年、国交回復に踏み切る。しかし、トランプ政権下ではそれが見直されるかもしれない。(全3話中第3話)
時間:10分50秒
収録日:2017年4月26日
追加日:2017年6月26日
≪全文≫

●キューバ危機を世界は固唾をのんで見守っていた


 次に、キューバ危機の話をしたいと思います。これは、私が大学2年のときに起こった事件です。アメリカは1961年にキューバへの侵攻に失敗しました。1962年に、今度は陸海空の正規軍の大部隊で、再びキューバの制圧を目指したのです。

 当時、CIA長官のもとにとんでもない情報が入ってきました。キューバにソ連製のミサイルが多数、アメリカ本土を向けて設置されている、というのです。極秘情報ですが、やはり国民に言わざるを得ないということで、このことが発表されました。1962年10月22日のことです。しかも、大西洋をカリブ海に向けて、ミサイルを積んだ多くのソ連の艦船が、それこそチェーン状に接近しているということも分かりました。

 これを聞いたジョン・F・ケネディ大統領は、ソ連艦隊の包囲を命令し、アメリカ海軍が出動しました。私は、当時大学2年でしたから、毎日手に汗握りながら、新聞とテレビを見ていました。世界はどうなってしまうんだ、と思ったものです。ソ連艦船が今、目の前から立ち去らないのであれば、アメリカ軍は総力を持って攻撃する。さあどうなるか。その辺り一帯に、核弾頭を積んだミサイルが設置されているわけです。世界は固唾(かたず)をのんで、その瞬間を見守っていました。

 当時、ソ連共産党の第一書記はニキータ・フルシチョフでしたが、彼はアメリカとにらみあった後、10月28日にようやく撤退を命令します。このとき、世界は核戦争の恐怖から解放され、本当にほっとしました。今でも、よく覚えています。


●アメリカと国交断絶するも、奇跡的に持ちこたえてきた


 それ以降、アメリカはキューバと断交し、非常に厳しい経済制裁を続けてきました。アメリカと至近距離にあり、砂糖の輸出をはじめとして、アメリカ経済に深く依存してきたキューバは、1959年以降、56年間も持ちこたえてきたのです。しかも、ソ連の崩壊以降は、ソ連からの援助も絶えていました。これは世界史の奇跡の一つといわざるを得ない、と思います。その間、キューバでの教育や医療は全て無償でした。所得格差も最小限のものです。つまり、キューバは独自の社会主義体制を築いてきたのです。

 アメリカは、キューバと国交を断絶して以来、アメリカの主導で構築した、南米諸国を網羅する米州機構(Organization of American Countries)から、キュー...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
「中華民族の偉大な復興」と中国外交(1)外交姿勢・前編
四字熟語で見る中国外交の変化
小原雅博
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博

人気の講義ランキングTOP10
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
宗教で読み解く世界(1)キリスト教の世界
キリスト教とは?…他の一神教との違いは神様と法律の関係
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(2)世界市民と国家連合
「コスモポリタニズム」の理想と「国家連合」というプラン
川出良枝
大谷翔平の育て方・育ち方(1)花巻東高校までの歩み
大谷翔平の育ち方…「自分を高めてゆく考え方」の秘密とは
桑原晃弥
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純