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カルドーゾ大統領とルーラ大統領によるブラジルの発展

ブラジル訪問に学ぶ(2)ブラジルを頂点に導いた二人の大統領

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
日本・ブラジル首脳会談で握手する
ルーラ大統領と小泉首相(平成17年5月26日)
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/koizumiphoto/2005/05/26brazil.html)より
軍政からオイルショックを経て民政移管。その後、2000パーセントに及ぶインフレ率が一気に1桁台に収束。どん底と頂点を繰り返し経験しながら、ブラジルはその存在感を高めていく。奇跡の逆転劇を可能にした二人の偉大な大統領の秘策を島田晴雄氏が解説するブラジル篇第2話目。(2014年10月2日開催島田塾第117回勉強会島田晴雄塾長講演より、全7話中第2話目)
時間:13:53
収録日:2014/10/02
追加日:2014/12/23
タグ:
≪全文≫

●軍政時代の功績-見事な経済戦略


 軍政が敷かれて治安状況が少し治まったということで、投資がどんどん起きました。この頃、ブラジルにはホンダが入っています。特に、ホンダのブラジルでの二輪車の販売台数は今1000何百万台で、すごいのです。

 ところが、この軍政は面白くて、経済戦略が見事なのです。テクノクラート(官僚)のロベルト・カンポスという世界的に有名なエコノミストが経済企画庁のようなものをつくって、彼らのチームでいろいろなことをやります。輸入ばかりして一次産品しか出していなかったのを、輸入代替工業化路線を進めました。

 後にブラジルが世界に誇る大計画になったものは、実を言うと全て軍政時代のもので、このロベルト・カンポスたちがしたことなのです。例えば、海洋油田の開発ですが、最近地下5000メートルの採掘に成功して、画期的ということで注目を浴びていますけれど、それもこの時代に考えられました。それから、エタノールです。アメリカでは農地を減らさなければいけないですが、ブラジルは、いくらとうもろこしでエタノールをつくっても、食用とうもろこしを減らす必要がないほど農地が広いのです。それから、セラード農業開発です。これは田中角栄さんがその開発支援を約束して始まりました。そして、カラジャス鉄鉱山ですが、これは世界最大の鉄鉱山です。また、世界最大のイタイプ水力発電所、マナウス保税加工区、5000キロメートルアマゾン横断道路、鉄鉱石運搬の鉄鋼鉄道、これらは全部軍政の時代に構想が出来ているのです。


●オイルショックで極度のインフレに-軍政から民政へ移管


 軍政の前半に経済成長率年率10パーセントの高成長を達成したので、世界中から投資が殺到して、今度はまた底の状態から山に向かってバーッと上がったのです。前回お話したクビチェック大統領の失政の頃から10年経ってこういうことが起きるのです。

 ところが、オイルショックで暗転します。ブラジルは当時、日本と同じ立場で、石油が全然出ない国でしたから、アラブが石油価格を上げたので、とんでもないインフレになったのです。そこで、石油不足に対してブラジルは正攻法で、海洋石油開発をしよう、エタノールを活用しよう、大規模水力発電をやろうということになりました。こういったことを資材の国産化というのですが、そういう効果が出る前に財政赤字がどん...
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