テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
テンミニッツTVは、有識者の生の声を10分間で伝える新しい教養動画メディアです。
すでにご登録済みの方は
このエントリーをはてなブックマークに追加

「全体のことを考えろ」という父の言葉を肝に銘じて

政治家の使命~目先にとらわれず50年、100年先のビジョンを描く~

村井嘉浩
宮城県知事
情報・テキスト
 自衛官としての安定した生活を捨て、政治の道を志すことを決意した村井嘉浩氏が、今でも大切にしているのは、父からもらったある言葉だと語る。その言葉を支えに全力で県政に向かう村井氏が考える、政治家の使命とは?
時間:08:05
収録日:2014/02/14
追加日:2014/05/22
カテゴリー:
≪全文≫

●「全体のことを考えろ」という父の言葉を肝に銘じて


―― 県議に最初出られたのは、何歳のときですか。

村井 34歳です。

―― そこから10年で知事になられて、政治家の立ち振る舞い方、職務としての厳しさは、その県議時代くらいからだんだんと備わってきたものですか。

村井 そうですね。私は、政治家になろうと決めて自衛隊を辞めて政経塾に行くときに、父とずいぶんいろいろと議論をしたのです。そのときは結婚して子どももいて、公務員ですから、黙っていても定年までいて安定した自衛隊の生活なのに、母からは当然「なぜそれを捨てるのか」「政経塾に行って、何をやりたいのか」と聞かれました。
「政治家をやりたい」と言ったとき、母は反対だったのですが、父は、「それは男の生き方だから、すばらしいではないか」と言ってくれました。
ただ、「政治というのは、いわば武士と同じだ。つまり、自分のことを考えていてはいけない。全体のことを考えろ。だから、政治で金儲けをしようとしたり、自分のために政治を使うといったことだけはやめろ。全体のためにやれ。国民のため、県民のため、市民のため、町民のため。全体のことを考えてやるような政治をするなら、いいのではないのか」と言ってくれたのです。

―― 立派なお父さんですね。

村井 その父の言葉がずっと頭にこびりついているのです。ですから、もう全体のためにやって、それでだめなら、それは仕方がない。自分はとにかく、全体の利益のためになると思うことをやろうと思っています。

―― でも、陸上自衛隊のヘリコプターのパイロットで、そこから別の道へと決めていくわけですから、それはすごい決意ですね。

村井 はい。大変でした。

―― 大変な決断でしたね。その時はもう奥さんもいらした。

村井 はい、女房がいました。

―― では、大変でしたでしょう。

村井 私が自衛隊にいたときで、学校に入ったときだったのですが、「政経塾に行って政治を志したい」と話したときに、女房が反対すると思ったのです。次の日、朝起きたときに女房が、大学の課題を書くときのザラ紙に鉛筆書きで、「自分の進みたい道に進んでください」と書いてあったのです。その紙は、今でも机の上に貼っていますけれども。

―― それはできた奥さんですね。

村井 あれはもう、死ぬときは棺おけに入れてもらおうと思っていますね。そういうこともあって、では政経塾を受けようかなと思ったのです。

―― それはすばらしい話ですね。

村井 あと、父のその言葉、そして幸之助さんの言葉。やはりそういうことが、自分の人生を決めてきたなと思います。
本当に自信を持って言えることは、この8年間で、利権がらみの仕事は一切したことがないです。ゼロです。きたら全部断っています、当然きますけれど。利権にからむなと思う仕事は、絶対にやらないです。それで儲けよう、という気がないですし、お金持ちになる気もないですし。ただし、全体の利益になるなと思うことは、どんな反対があっても突っ込んでいっています。


●将来を見据えて着手した宮城県の防潮堤工事


―― でも、ものすごいですよね。防潮堤など、やれば必ず反対の嵐になることをやっている。あることないこと、めちゃくちゃに言われるでしょう。

村井 そうですね。そうなのです。

―― NHKの番組で、「あ、村井が出ている」と思って、たまたま見ていたのですけれども、やはり大したものだと思います。いろいろな人がいっぱいいますから、それを説得していく技というのは大変ですよね。

村井 いや、それはもう大変です。

―― 結構、企業経営のほうが楽だと思うのです。企業経営には数値目標があって、「ぐちゃぐちゃ言わずに行け」という感じがありますから。でも、行政の場合は、数値目標ではないですからね。しかも、それが10年先に効いてくるのか、20年先に効くのか、今年効くのか、時間軸が見えないですよね。

村井 そうなのです。

―― その中で説得するというのが難しくて、非常に大変な職業ではないかなと思います。

村井 そうですね。結局、比較されてしまうのです。防潮堤の件では今回、岩手県は割と住民の皆さんの意見にしたがって、「高さなどもご自由にどうぞ」というやり方です。しかし、宮城県は、しっかりとした基準を決めて、シミュレーションをかけて、「この高さでいくぞ」と決めました。変える場合は、しっかりとしたシミュレーションをかけて、計算をして、「これで命を守れる」というのが決まってから、ゴーを出してやっているのです。あとは、位置を変えたりとか、低くできるような工夫もしています。でも、間違いなくこれで同じ効果が得られる、という確証をわれわれが持たないと、ゴーを出していないのです。
ですから、よく、「隣の県は柔軟なのに、宮城...
テキスト全文を読む
(1カ月無料で登録)
会員登録すると資料をご覧いただくことができます。