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人生100年時代におけるリカレント教育の重要性

人生100年時代の時間配分と大学の役割

伊藤元重
東京大学名誉教授
概要・テキスト
東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が、人生100年時代に当たり、人生の時間配分の捉え方について語る。日本では大学を卒業すると多くの会社員が働き詰めになり改めて大学で学び直すことは非常に少ないが、欧米は社会人経験を積んでから大学に入ることが当たり前だという。そこで大人の学び直しという観点からも、大学の果たす役割は変化するべきだと伊藤氏は説く。
時間:12:40
収録日:2018/02/21
追加日:2018/03/19
カテゴリー:
≪全文≫

●勉強しすぎ、働きすぎという問題


 最近、日本でも人生100年の時代になると言われています。実際、これから生まれてくる子どもたちは平均的に100歳まで生きる人がずいぶん多いという研究もあり、100年とまでは行かなくても、80歳とか90歳まで生きるとなると、自分の人生をどのように設計するかということが非常に重要な課題になるわけです。そういう意味で、いろいろなところでこの話が話題になっているのです。

 私にとって非常に印象深かったのは、30年以上前に聞いたことですが、有名な作家で評論家でもある堺屋太一さんという人の話です。彼と議論した時に「伊藤さん、日本の問題って、子供は勉強をしすぎだし大人は働きすぎだし、だから歳を取ると何もやることがないことなんだ」と言われました。そのことが非常に印象に残っているのです。勉強を好きかどうかは別として、子どもの世界は学校を中心とした世界の中にこもっています。そして、学校を出たらもう二度と学校に戻ってくることはなく、社会人になると今度は仕事漬けで、家庭を顧みずに仕事ばかりしている人が多い。その後、会社を辞めると抜け殻になってしまう。したがって歳を取るとやることが何もない、ということを堺屋さんは言ったのだろうと思います。

 これは実は結構重要なポイントだと思います。それは自分の人生、一生について考えたとき、その中で時間配分をどのように考えていくのかということです。高校や大学を出るまで学校にしかいかない、高校や大学を出たら後は仕事三昧で、歳を取ったらもうやることがないということでは、困るだろうと思うのです。したがって、堺屋さんが恐らくその時言いたかったのは、子どもにとっては社会のことを見る機会がもう少し必要だし、大人にとっても仕事ばかりしていないで、学び直しとしていろいろなことを外から吸収したり他の社会を見たりすることが重要で、そうすれば歳を取ってもいろいろな可能性があるのではないのかということでしょう。


●欧米では社会人の経験を積んでから学び直すのが当たり前


 そして今、日本の社会でそういうことが非常に求められてきています。この観点で見ると、いくつか日本に大きな課題・問題があるだろうと思います。例えば、日本の一般的な国民は何歳で大学を卒業するのだろうか、と考えると、大体22歳か23歳、あるいは途中で浪人や留年などすれば、24歳くらいまで大学...
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