●解決策が見つからない少子高齢化問題
やはり何よりも大変なのは、高齢化。そして女性が子どもを産まないということ。高齢化、少子化問題の解決策は、なかなかないのです。
女性にもっと働く機会を与えるべきだという意見については、そうだと思うのですが、そうなると、働く女性は、余計に子どもを産むことを躊躇するようになります。
また、日本は非常に食べ物がおいしいし、健康食品も多いじゃないですか。それで、いわゆるメタボの問題について、日本では結構騒ぐのですが、ぼくみたいな外国人から見れば、アメリカのように、本当にものすごく太っている人はめったにいません。マクドナルドばかり食べている日本人の中に最近そのような人もいることはいますが、めったにいません。
ですから、本当にobesityという、太りすぎの問題もないから、アメリカ人がなりやすいいろいろな病気にはならないのです。
健康的な生活をして、自分の健康に注意を払い、健康保険制度で毎年検査をしてもらったりするから、ますます高齢化して、ありがたいことに、なかなか死なないのです。ですから、長生きして、しかも子どもが産まれない。それでは、 安倍さんが何かをやろうと思っても、解決策はありません。
●日本が歩むべき道
そして、日本は、大きな移民国にはとてもなれないと思います。オリンピックまでに、建設業で労働者が足りないから、外国人を一時的に入れても、移民をたくさん受け入れる国にはなりません。
ぼくには日本の財界にいろいろな友達がいるのですが、彼らから、安倍さんが総理大臣になってアベノミクスを言い出してから、「アベノミクスがあるから、今までのわれわれの会社の戦略を変える」という話を聞いたことがありません。
要するに、今の会社が生き残るためには、やはりグローバル化、グローバリゼーションに対応していくことです。そして、そのためには、生産のローカライゼーション、つまり外国でもっと生産をすることです。それゆえ、外国での生産をやめて、また日本で生産しようということにはなりません。
日本が歩まなければならない道は、ますますグローバリゼーションをして、外国にローカライゼーションをする。生産拠点を外国に持っていく。ただし、日本の国内では、よりハイテクノロジーの分野に力を入れる。あるいは、高等教育の改革をして、イノベーション能力がもっと強くなるような教育をしたり、また、英語を第二国語のようにして、子どもが小さいときから英語を覚える、ということです。
●「カタカナ禁止」で日本人の英語の発音を向上させる
これは余談になりますが、英語を教えるときに何が日本にとって一番必要かと言えば、絶対にカタカナを使わないことです。
日本人が英語の〝milk〟という言葉を頭で見ると、「ミルク」になってしまいます。〝milk〟にはなりません。それは、カタカナによって、日本人の英語の発音がおかしくなっているからです。
日本人は、みなローマ字を読めるじゃないですか。だから、いっさいカタカナを禁止するのです。例えば、英語のクラスで、英語を教えるときには、絶対にカタカナを使ってはいけないことにする。これを基本にすれば、革命的な影響があると、ぼくは確信しています。
ですから、英語をローマ字で教える。絶対にカタカナを使わない。そうしたら、いきなり日本人の発音がよくなります。
●一番大事な構造改革は教育改革
とにかく、third arrow、三番目の矢である構造改革云々は、やるべきことではあるし、ある程度やれると思います。しかし時間はかかります。その中で、ぼくが一番大事だと思うのは、教育改革だと思うのです。
ただ、安倍首相の言う教育改革の大きな焦点は、日本の歴史の教育を変えることです。しかし、それは、要するに、自分の国にプライドを持つために、戦前のプライドを持てない歴史にまで、プライドを持たせようという印象を与えるわけです。
歴史というものには、どの国にも、つらい歴史も誇るべき歴史もあるわけです。それを教えることは大事だけれども、同時に、将来の人間像として、どういう人間を作るべきかということを、もっと抜本的に改革したほうがいいと思います。
●韓国の教育改革から学ぶべきこと
隣の韓国は、1996年、金泳三政権のときに、高等教育改革を行いました。そのときに、例えば、ソウル大学とか、延世大学とか、高麗大学など、10ぐらいある一流大学、に政府がかなりたくさんのお金を出し、競争させて、よりインターナショナル、グローバルなセンターになるため頑張るようにといろいろと推進したわけです。
それで、韓国はずいぶん変わりました。日本でそのようなことをやっているかと言ったら、やっていません。
この教育改革は、アジア危機の直前に行ったのですが、危機になっても、変えま...