実務に生きる行動経済学
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
行動経済学で注目される「右手の法則」「群れの動機」とは
実務に生きる行動経済学(2)右手の法則と群れの動機
伊藤元重(東京大学名誉教授)
東京大学名誉教授で学習院大学国際社会科学部教授の伊藤元重氏が注目している「右手の法則」と「群れの動機」について解説する。「右手の法則」とは右利きの人が多いことから生み出された法則で、コンビニやスーパーで大切にされているものだ。また行動経済学の議論の中で今、非常に注目されているのが「群れの動機」だ。人間は群れの行動が非常に顕著で、それを重要だと思っているという。(全2話中第2話)
時間:9分09秒
収録日:2018年2月21日
追加日:2018年3月22日
≪全文≫

●行きつけのコンビニは時計回り?反時計回り?


 学生には前回のような話をよくしていますが、少し前に読んだパコ・アンダーヒル氏の『なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学』は非常に面白い本ですから、ぜひ読んでいただきたいと思います。パコ・アンダーヒル氏はマーケティングの専門家で、アメリカの店舗をずっと観察してきました。彼の場合は行動経済学でいう癖を超えて、体の身体機能や男性と女性が持つ行動パターンの違いなどに非常にこだわった分析をしています。

 例えば、コンビニやスーパーがいちばん分かりやすい例なのですが、時計回りで店を回るのか、反時計回りで回るのかという大問題があるのです。要するにスーパーでもコンビニでも、どちらに動くかということを考えているわけです。皆さんにも自分がよく行くコンビニエンスストアを思い出していただきたいのですが、どこから入ってどちら回りで動いていくか。多分一般的なお店は反時計回りのはずです。

 なぜかというと理由は簡単です。人間の多くは右利きだからで、左手でカゴを持って右手で棚から商品を取るのが自然な動作です。左回りになってしまうと、いちいち左手で取るか、右手を横から差し出して取ることになるため、非常に不便になります。

 これを「右手の法則」と呼ぶらしいですが、人間が右手で物を取ることを前提に店の品ぞろえをどう組み立てようかと考えるのは、とても大事なことなのです。

 それがもっと顕著に出るのが駅の売店です。例えば、出張に行くサラリーマンはカバンを持っていますが、売店で飲料やなどを買うときはどうするでしょう。カバンを床に置いて、お金を出して買うということは、あまりしません。左手にカバン、右手で商品を持って、お金をパッと差し出す。そのためには店員はどこに座っていなければならないかというと、真ん中より少し左だというのです。こういった法則のようなものもあります。


●男女の買い物に対する情熱の落差をどうする?


 パコ・アンダーヒルの本には、こうした人間の癖が非常に面白く描いてあります。私が非常に印象的だったのは、百貨店で衣料品を買う話です。

 洋服は体に合わないといけないから、フィッティング・ルームがある。男性の場合、フィッティング・ルームに入って洋服が合うと6~8割ほど購入となります。サイズが合わなければ買いませんが、サイズ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
青島未佳
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新