進化心理学とは何か?~生物進化と心
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ヒトの脳には裏切りが直感的にわかるモジュールがある
進化心理学とは何か?~生物進化と心(3)心はアーミーナイフ
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
進化心理学では、臓器は進化の過程とともに環境適応するように発達してきたという。現代人が気になるのは、それが今なお備わっているのか、また大きく変化した環境のもとでどう働いているのかという点だろう。総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏にご案内いただく。(全4話中第3話)
時間:16分00秒
収録日:2018年2月14日
追加日:2018年6月3日
カテゴリー:
≪全文≫

●神経系は、動物の進化環境に適応して働くのが大前提


 進化心理学の大前提に、動物の神経系は、その動物が進化してきた環境に適応するように働いているということがあります。そういう臓器であるのだから、ヒトの神経系やこころ、脳を理解するには、ヒトの進化の舞台で生存・繁殖に影響を与えてきた課題が何であったかを知ることが必須だと考えられます。

 それには、ヒトが進化してきた環境がどういうものだったかということが問題です。現代、私たちが住んでいる環境は、あまりにも速いスピードで変化していますので、この環境がわれわれの適応環境であるとは考えられません。あまりにも速く変わり過ぎてしまいました。おそらく脳神経系の作動は、この変化に追いついていないだろうというのが、大きな結論の一つです。もしも追いついているものがあるとしたら、それは多分ものすごく無理をしているだろうと予測されます。

 進化心理学は、なんでもかんでも過去の進化環境に対する適応で説明しようとしているわけではありません。ただ、進化適用によるバイアスがあるだろうと考えられます。それを考慮して心理を見てみる場合とそうでない場合では、考慮した場合の方がいろいろなことをよく理解できるのではないかという提案をして、仮説を立てるわけです。

 進化的なことだろうと考えたら、「ヒトはこういうバイアスが掛かっているのではないか」と提案をして、その仮説が正しいかどうかを確かめる。それが正しいと分かれば、現代の環境下でそのバイアスに逆らったことをしようとする場合、どこに気を付ければいいかの提案ができる。そのような流れで進化心理学は考えようとしています。


●進化環境で生存のために必要だったのはどんなことか


 ヒトの進化環境については、人類学の方から提供される知識がいろいろあります。

・いろいろな雑多な食べ物を食べる
・学習に依存して、高度な技術を使って食料を獲得している
・学習の結果をたくさん伝承する
・子どもが大人に依存する期間がとても長い
・寿命が長く、おじいさん、おばあさん、親、子どもと三世代共存で資源のフローがある
・男女が性的に分業をして共同で働く
・夫婦にペアボンド(つがいの絆)がある
・血縁者だけではなく、非血縁者を含む多くの人間が一緒に共同作業をする
などです。

 こうでないと生きていけなかった、解決しない...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子