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再生可能エネルギーによる新しい産業の創出

地方銀行が取り組む地域資源を活用した地方創生

斉藤永吉
株式会社北都銀行名誉顧問
情報・テキスト
山積する地域課題を乗り越えていくためには、地域資源を生かした産学官金連携でなされる新産業の展開が有効であると、株式会社北都銀行取締役頭取の斉藤永吉氏は指摘する。これを実現した北都銀行の経営戦略とはいかなるものだったのか。
≪全文≫

●再生可能エネルギーによる産業創出という地方創生戦略


 北都銀行の斉藤です。北都銀行は秋田市に本店があります。秋田には地域課題が山積しています。その課題を乗り越えていくためには、イノベーションが不可欠と考えています。われわれの経営戦略は、地域課題に真正面から向き合い、そして、地域にイノベーションを起こすことです。

 地域課題解決のための8つのイノベーション戦略、これが北都銀行の経営戦略そのものです。その中で特に力を入れているのが、「再生可能エネルギーによる新しい産業の創出」です。風力発電やバイオマス発電によって、地域にイノベーションを起こそうと挑戦中です。今日は、このテーマについて報告させていただきます。

 秋田県は、地域資源に大変恵まれています。特に風資源です。日本海側に吹く風は風力発電にとって好条件で、風力発電の導入量は青森県に次いで全国2番目です。現在、陸上に200本を越す風車が立っておりますが、今後さらに100本以上の建設が予定されています。2012年9月には、当行が中心となって、地元風力発電事業会社「ウェンティ・ジャパン」を立ち上げました。

 こうした試みは、地元の大切な資源を、県外資本ではなく地元資本で活用したいという思いから行われています。秋田県は、森林資源も豊富です。秋田県の県土面積の70パーセントが森林です。そして、秋田杉は日本三代美林の一つになっています。この豊富な森林資源を活用した、大型バイオマス発電事業が2016年7月にスタートしました。


●産学官の連携で木質バイオマス発電事業を展開


 バイオマス発電事業会社である株式会社ユナイテッドリニューアブルエナジーが、2013年10月に設立されました。これは、地元若手企業家によるチャレンジです。地域活性化に対する熱意と、イノベーションに挑戦しようという志を、産学官金で応援することにしました。発電所は、2016年7月に予定通り運転開始になっています。発電規模は2万キロワットで、総事業費は126億円です。発電量は年間139百万キロワットで、売上高にすると44億円になります。これは、一般消費電力にしますと38,000世帯分です。東北でも最大級の発電事業です。

 今回の事業で最も大事なことは、原木生産者・チップ業者との信頼関係です。燃料である木質チップを安定して調達するためには、このことはとても重要なことです。今回の事業を立ち上げるために、生産者の悩みや課題を徹底的に調査しました。その結果、「価格が安定していない」、「価格が安い」という課題が浮き彫りになりました。これを受け、今回の事業では、生産者・山側にも十分な利益を還元できるスキームにしました。その結果、県内全域の7箇所から、チップ提供の協力体制が出来上がりました。さらに、県内2箇所に新しいチップ工場が建設されることになりました。

 今回の事業は、北都銀行がアレンジャーとなりプロジェクトファイナンスを組成し、支援しました。事業資金126億円のうち、出資金は20億円です。残り106億円がプロジェクトファイナンスでの調達です。組成に当たっては、地元金融機関全てに参加していただき、オール秋田で支援しました。融資方針決定までは、約2年をかけて議論しました。事業の評価ポイントにあるように、多方面から事業の実現性を検討しました。特に、燃料の安定調達については、現場を何度も視察し、生産者やチップ業者との意見交換・情報交換を繰り返しました。


●プロジェクトファイナンスの組成によって、新しい事業にチャレンジ


 今回のプロジェクトファイナンスについては、「地方版プロジェクトファイナンス」と言うことができると思います。「地元若手企業家のチャレンジを地域金融機関が支援する」「地域のリスクを地元銀行が負う」「組成に当たっては地元の金融機関が全て参加するということにする」、このことに、北都銀行のプロジェクトファイナンスの特徴があると思っています。

 北都銀行では、これまで20件・880億円のプロジェクトファイナンスを組成してきました。全て再生可能エネルギー向けの案件です。可能な限り地域リスクを取って、新しい産業の創出にチャレンジしていきたいと考えています。


●相応のリスクを取ることで、北都銀行は地域の発展に貢献


 北都銀行は、今回の事業について相応の地域リスクを取りました。地域の課題に真正面から挑戦することが、われわれ地域金融機関の役割であり、責任であるからです。加えて...
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